フロリアン・レオンハルトの工房で研鑽を積む
フィリップ・イーレは、イタリアでバイオリン製作を
学んだあと修理の修行を積み、ロンドンの著名ディーラー・フロリアン・レオンハルトの工房に入りました。レオンハルト氏の指導のもと、精巧なレプリカ・バイオリンを製作するプロジェクトに加わり功績を上げます。
7,8年前にモンドムジカ(毎年イタリア・クレモナで秋に開催されるバイオリン最大の見本市)で最初にそれらの楽器を見た時の衝撃を今でも忘れられません。それまでのレプリカ・バイオリンに比べて、全てが自然でまるで本物の名器を見ているようでした。文字通り、そのレベルの高さに息を飲みました。
いつかフィリップの製作したバイオリンを日本に紹介したい…と感じていました。
遂にオーダーが実現
時は流れて昨年のモンドムジカ。フィリップは同じく世界最高峰のバイオリン・メーカーのステファン・フォン・バウアーと共同ブースを出していました。展示されているバイオリンのレベルの高さに思わず興奮して、フィリップに注文を出したいと話しかけました。しかし、彼は基本的にはプレイヤーに直売で、ディーラーには売らないとのこと。「そこを何とか」と頼み込んでメールのやり取りを開始、熱意が通じて注文を受けてくれることになったのです。実は、フィリップの奥様は何と日本人で、現在もJ&A Beareで働く優れた修復者ムライトモコさん。今回は奥様の後押しがあったようです…
写真:Philip Ihle 2019 London , made after Guarneri Del gesu"Heifetz"
渾身の作品がアジア初上陸
4月17日、文京楽器に本人自らが納品にやって来ました。フィリップ・イーレのバイオリン、アジア初上陸です。作品のモデルは、ガルネリ・デルジェス1741年製・EX.ハイフェッツ。文句なしの素晴らしい出来栄えです。現在世界中のディーラーでフィリップ・イーレの作品を扱っているのは、文京楽器だけ。ついに、フィリップの楽器を日本で紹介することが可能となったのです!
フィリップは私が尊敬する現代メーカーの一人。彼こそが21世紀のスーパー・モダン・バイオリン(今までの既成概念を塗り変えるような新作バイオリンのことを最近そう呼んでいます…)を牽引する旗手の一人であることは疑う余地がありません。
そんなフィリップのアジア初上陸のバイオリンを手にするのは一体誰になるのでしょうか…
(文:堀 酉基)
フィリップ・イーレ / Philip Ihle
クレモナでバイオリン製作を学ぶ。バイオリン製作の基礎を習得した後、スイスのWilhelmGeigenbauで修理技術を習得。その後は、ロンドンのフロリアン・レオンハルトに5年間に渡り研鑽を積む。当初は、修理スタッフとしてスタートしたが、名器のレプリカを製作することとなり、その卓越した作品群は世界的に賞賛を得た。フロリアンの工房を出たあと、2年間スイスのMark Wilhelmと共同で工房を運営、2013年10月に自身の工房IHLE VIOLINSをロンドンに設立した。妻は、J&A Beare工房の優れた修復家で日本人のムライトモコ。
IHLE VIOLUNS
http://www.ihleviolins.com/