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今回は番外編と称しまして、いわゆる「~スクール」と称される楽器についてご紹介いたします。

スクールとは

この楽器は製作者不詳、18世紀にトスカーナ地方製作された、グラニャーニ・スクールと思われる楽器として、イギリスの一流ヴァイオリンディーラーの鑑定書が発行されています。 この「スクール」という表現は、日本語でいう「〜派」にあたる意味です。つまりこの楽器は、アントニオ・グラニャーニの影響を強く受けたイタリアン・オールドヴァイオリンである事を指しています。

実際に楽器をよく見ると、象嵌部分にはクジラの髭(グラニャーニをはじめ、イタリアではごく一部の製作者しか使用しなかった素材)で出来ており、ニスの色合いなどもグラニャーニとよく似て、共通する点が見受けられます。 

しかし、製作者を裏付ける決定的な要素(典型的なモデリングや、焼印など)が無いことで、現時点ではグラニャーニと言い切れない為、スクールとなっているのです。

スクール楽器の魅力的な側面

①高い演奏性を備えている
良いスクール楽器は、楽器の形状・製作技術の特徴・材料選択などにおいて、同時代の名器との類似点が多く見られます。構造が酷似している場合、音色や音量など機能面においても、名器とほとんど変わらない作品もあります。 

②市場価格がリーズナブルである
現時点で作者が特定されていない分、同時代のメーカーに比べ価格が安い場合がほとんどです。
特に相場が高騰しているオールド楽器では、スクールであれば現実的な値段で購入できるという利点があります。 

③資産価値が付随する
古くから海外オークションやエキスパート達の間でも、スクール楽器は広く取引されています。
本作品の様に、スクール品でも一流の鑑定書が付いている楽器もあり、作者不詳であっても市場価値を持つ作品も存在します。


以上の理由により良質なスクール楽器は、実はコストパフォーマンスが非常に優れており、演奏者にとってのアイテムとしてはお勧め出来るといえます。

次回からは、イギリスのヴァイオリン製作の歴史を数回に分けてご紹介いたします。

文:窪田陽平