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連載『心に響く、レジェンドからのメッセージ』

1984年から1993年まで、文京楽器が発行していた季刊誌Pygmalius(ピグマリウス)より、インタヴュー記事を復刻掲載します。当時、Pygmalius誌では古今東西のクラシック界の名演奏家に独占インタヴューを行っておりました。
レジェンドたちの時代を超えた普遍的な理念や音楽に対する思いなど、心に響くメッセージをどうぞお楽しみください。

第27回 ミカエラ・フカチョヴァ / Michaela Fukačová

引用元:季刊誌『Pygmalius』第32号 1991年1月1日発行
■ミカエラ・フカチョヴァ プロフィール

プラハ生まれ。5歳でピアノ、15歳でチェロを始める。1975年にブルノ音楽院、1980年にプラハの音楽アカデミーを卒業。サッシャ・ヴィジトモフに師事。チェコの国内コンクール第2位、「プラハの春」国際コンクール第2位の他、1986年のチャイコフスキー・コンクール第4位などの入賞歴を持つ。主にソリストとしてヨーロッパを中心に演奏活動を行う。

1. チェロはかけがえのない友達

フカチョヴァさんは、都合で来日中止になったヴァイオリンのヨゼフ・スーク氏の代役として同じチェコから初来日、N響定期公演でブラームスの二重協奏曲のソリストを務めました。「お箸の使い方もうまくなったわ」と微笑む陽気で気さくなチェロ奏者です。カタカナのサインも自筆してくれました。

 
 私の場合、両親が共に音楽家で、かつて2人はピアノの演奏家としてコンクールで1、2位を分け合ったという仲です。そういう両親のもとで育ったので、幼い頃から音楽に親しみ、オペラにもよく行きました。5歳でピアノを始めた私は、15歳でチェロに転向しました。

 チェロを選んだ理由ですか?ヴァイオリンを始めるには遅すぎたのも理由の一つですが、家には祖父が弾いてたチェロがあったので、自然にチェロを弾くことになったのです。

 ですから、私にとって音楽は自分の身体の一部みたいなものですし、チェロはいうなれば、かけがえのない友達です。辛いときなど、楽器を構えて話しかけるように、一心に 弾きます。この友達は何も言葉では語ってくれませんけれど…。もちろん、男友達ですよ、念のため。

 家族は、私の演奏会には可能な限り来てくれます。何しろ、両親はプロの評論家ですから。母など、ボーイングからドレスに至るまで厳しいです。妹は「良かったわよ」って言うだけだけど。
 

2. トリオやデュオにも取り組む

 ふだんはソリストとしての活動が中心ですが、時々トリオもやりますし、スークとデュオを組むこともあります。あと、変わったところでは、ギターとの二重奏でファリャやグラナードスなどのスペインものも手がけています。チェロとギタ ーは、なかなか合うんですよ。(それもそのはず、デュオを組む相手はギタリストの御主人なのです)

 今回、N響と3回共演しただけですけれど、日本の聴衆は程度が高いと思います。スカンジナヴィアやすぐ「ブラーヴォ!」と熱狂するイタリアを除いた普通のヨーロッパの聴衆と全く変わりません。教育の成果でしょうか、日本では若い人達がたくさん音楽会に来ていていいで すね。チェコやスカンジナヴィアではもっと上の世代が多いのです。私は音楽家の家庭に育ったので、自然に音楽と出会いましたが、チェコでは音楽と親しんでいないために、子供に音楽教育をできない家庭も少なくありません。

3. バッハの無伴奏で始まるリサイタルを

 最近の東欧の社会情勢の変化は音楽の分野にも影響を及ぼしています。外国からの人々が高い切符を買うので、それまでチェコでは安かった入場料が最近値上がりしています。それに、人々は音楽会に行くより、テレビのニュースを見ている方がいいという雰囲気です。

 私はロマン派の作品が得意ですが、聴くのはバッハが好きです。弾くにはまだ若すぎるかもしれないけれど…。協奏曲だったら何といってもドヴォルザーク!それにしても、モーツァルトやベートーヴェンがチェロ協奏曲を残してくれなかったのは残念です。

 リサイタルをするとしたら、やはりバッハの無伴奏で始めたいものですね。それも第4番か第5番。その後は、ベートーヴェンやシューベルト、シューマン。それからフランクやグリーグ、ショスタコーヴィチ、ブラームス。1回の演奏会では無理ですけれど。

 帰国後控えている録音や演奏会をきちんとこなしていくのが、当面の目標です。11月にスークとの二重奏でコダーイ、ラヴェル、マルティヌーなどを録音して、翌週にはコンサート。その後、マルティヌーの作品集の録音。デンマークでのコンサート、それから…クリスマスですね。6月にまた来ますので、どうぞ聴きにいらしてください。