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連載『心に響く、レジェンドからのメッセージ』

1984年から1993年まで、文京楽器が発行していた季刊誌Pygmalius(ピグマリウス)より、インタヴュー記事を復刻掲載します。当時、Pygmalius誌では古今東西のクラシック界の名演奏家に独占インタヴューを行っておりました。
レジェンドたちの時代を超えた普遍的な理念や音楽に対する思いなど、心に響くメッセージをどうぞお楽しみください。

第17回 向山佳絵子(チェリスト)

写真: ピグマリウス第5号より
引用元:季刊誌『Pygmalius』第39号 1992年10月1日発行
第17回 向山佳絵子 /Kaeko Mukoyama

東京生まれ。松波恵子、堀江泰氏、レーヌ・フラショー、毛利伯郎の各氏に師事。1985年、第54回日本音楽コンクール第1位入賞。東京芸術大学を経て90年、ドイツ・リューベック国立音楽大学に留学し、ダヴィド・ゲリンガスに師事。同年、第10回ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール第1位入賞。88年、第3回アリオン賞審査委員奨励賞受賞。92年、第2回出光音楽賞受賞。
カザルスホールでの「向山佳絵子とチェロの世界」シリーズや、東京オペラシティでの連続リサイタル、各地の音楽祭への参加、JTアートホール室内楽シリーズのプランナー、ハレー・ストリング・カルテットの一員などとして活躍し、常に話題を集めている。
また、シュタルケル、ゲリンガス、スターン、ギトリス、アルゲリッチ等世界の一流演奏家との共演も数多くこなす一方、NHK交響楽団、東京都交響楽団、読売日本交響楽団、東京フィル、日本フィル、新日本フィル、大阪フィル、水戸室内管など数多くのオーケストラとも共演している他、リサイタル、室内楽にと多彩な演奏活動を繰り広げている。98年にはNHK-FMの人気番組「おしゃべりクラシック」のパーソナリティをつとめ、広い層からの支持を得た。その後もNHK-FMには度々出演、特番の司会や、生放送でリスナーのリクエストに応える等特に話題となった。最近では企画の公演が、BSクラシック倶楽部等テレビでも放送されている。2013~2017年までNHK交響楽団首席チェロ奏者も務めた。
録音はソニーより「バッハ無伴奏チェロ組曲全曲」ほか5枚のCDが発売されており、収録曲はNHKスペシャルやドラマのテーマ曲、TVCM曲などに使用されている。そのほか、カメラータ・トウキョウから池辺晋一郎と三善晃のチェロ協奏曲のCDもそれぞれ発売されている。
現在、京都市立芸術大学准教授として後進の指導を務める傍ら、日本を代表する実力派チェリストとして益々活動の場を広げている。  

"自由閣達、ニュータイプの演奏家"

向山さんというと、将来が有望視されているチェリストの筆頭。でも、彼女の口から飛び出すのは、「練習嫌い」「結婚願望」といった刺激的な言葉。のびのびとした天才肌の演奏の秘訣は、努力や苦労のあとを感じさせないこうした性格に、案外隠されているのかもしれません。


 私、とにかくさらうのが嫌いなんですよ(笑)。ピアノを始めた頃も、レッスンにはろくに行かないくせに、「発表会だけ出たい」というような子どもでね。

今だにそれが変わらなくて、この間もある演奏者に、「今までいろんな人と共演したけど、あなたほどさらわない人は初めて」って、驚かれました(笑)。

ですから、本番中にスリルを味わうことはしょっちゅう。どこかで痛い思いでもしない限り、この性格は、直らないでしょうね(笑)。

1. ドイツ留学中の経験

 リューベック音楽大学に留学中も、ずいぶんのんびり過ごしました。まず、ドイツ語が分からないので、請義にはほとんど行かなかったし、生まれて初めての一人暮らしが楽しくて、家事に精を出していたからです。

 留学というと、聞こえはいいんですけれど、実際には、演奏活動の関係でよく帰国してたんですよ。友達に休学届けを書いてもらっては、こっちに帰ってきていました。だから、通算するとそれほど長くドイツにいたわけではないんです。

 それでも、外に出て良かった。大学のクラスにもよりますが、特にチェロのゲリンガスのクラスは、すごい人ばかりで、それだけでも大変刺激的でした。

 それから、面白いと思ったのは、オーケストラ・スタディの授業があること。オーケストラ曲の難しいパッセージや、聴かせどころだけを、楽器ごとにまとめた勉強なんです。

 日本では、まずやらない授業ですが、ドイツでは、オーケストラを目指す人が多いものですから、その分、入団するのも大変。エキストラで弾きに行くにもオーディションがあるくらいです。それで、こんな授業があるのでしょう。

2. ソリストと言われたくない

 私は、昔から「合わせもの」が大好き。ピアノをやっていた頃も、発表会となると、連弾か2台のピアノを弾きたいと言ってました。

 チェロを始めたときも、松波恵子先生に師事しながら、ジュニア・フィルに入ってたんです。ジュニア・フィルは22歳ぐらいまでの人たちで編成したオーケストラです。

 松波先生は、オーケストラで弾くことが、基礎の勉強に差し支えるのではと危倶されて、私がそこに通うのをあまり歓迎されなかったようです。でも、そのとき知ったのもアンサンブルの楽しさです。現在も室内楽が好きです。もちろんコンチェルトもいいですけれどね。ですから、「ソリスト」と呼ばれるのは、私、あまり好きじゃないんです。

 今年は、カザルス・ホールで、「向山佳絵子とチェロの世界」というシリーズをやらせていただいているのですが、そのプログラムにも、室内楽の曲を多く取リ入れています。 無伴奏の曲ずくめの日は、チェロの音色をしっかり聴いていただいて、室内楽ではアンサンブルの中でのチェロの魅力を堪能していただけたら、と思っているんですよ。

3. わたしの楽器について

楽器はこれまでいろんな物を弾きましたが、今はアマティとゴフリラーの2台、それに弓もありますから、いろいろ大変です。

 楽器を1台にすればいいんでしょうけれども、持ち味がそれぞれ違いますでしょう?アマティは、何といっても音色が美しい。でも、オーケストラとコンチェルトを弾くには、パワーのあるゴフリラーを使うことが多くなっています。どちらも捨て難くて……。

4. 今後の展望について

尊敬する演奏家はたくさんいますけれど、その人たちと同じ演奏をするのではなくて、自分の世界、私だけの音楽を作り上げて行きたいですね。

それから、結婚もしたい。素晴らしい人に巡り合えたら、チェロをやめてもいいです。ショッピング大好き、遊び大好き。わりにミーハーなんです。