■日曜・月曜定休
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向山さんというと、将来が有望視されているチェリストの筆頭。でも、彼女の口から飛び出すのは、「練習嫌い」「結婚願望」といった刺激的な言葉。のびのびとした天才肌の演奏の秘訣は、努力や苦労のあとを感じさせないこうした性格に、案外隠されているのかもしれません。
私、とにかくさらうのが嫌いなんですよ(笑)。ピアノを始めた頃も、レッスンにはろくに行かないくせに、「発表会だけ出たい」というような子どもでね。
今だにそれが変わらなくて、この間もある演奏者に、「今までいろんな人と共演したけど、あなたほどさらわない人は初めて」って、驚かれました(笑)。
ですから、本番中にスリルを味わうことはしょっちゅう。どこかで痛い思いでもしない限り、この性格は、直らないでしょうね(笑)。
リューベック音楽大学に留学中も、ずいぶんのんびり過ごしました。まず、ドイツ語が分からないので、請義にはほとんど行かなかったし、生まれて初めての一人暮らしが楽しくて、家事に精を出していたからです。
留学というと、聞こえはいいんですけれど、実際には、演奏活動の関係でよく帰国してたんですよ。友達に休学届けを書いてもらっては、こっちに帰ってきていました。だから、通算するとそれほど長くドイツにいたわけではないんです。
それでも、外に出て良かった。大学のクラスにもよりますが、特にチェロのゲリンガスのクラスは、すごい人ばかりで、それだけでも大変刺激的でした。
それから、面白いと思ったのは、オーケストラ・スタディの授業があること。オーケストラ曲の難しいパッセージや、聴かせどころだけを、楽器ごとにまとめた勉強なんです。
日本では、まずやらない授業ですが、ドイツでは、オーケストラを目指す人が多いものですから、その分、入団するのも大変。エキストラで弾きに行くにもオーディションがあるくらいです。それで、こんな授業があるのでしょう。
私は、昔から「合わせもの」が大好き。ピアノをやっていた頃も、発表会となると、連弾か2台のピアノを弾きたいと言ってました。
チェロを始めたときも、松波恵子先生に師事しながら、ジュニア・フィルに入ってたんです。ジュニア・フィルは22歳ぐらいまでの人たちで編成したオーケストラです。
松波先生は、オーケストラで弾くことが、基礎の勉強に差し支えるのではと危倶されて、私がそこに通うのをあまり歓迎されなかったようです。でも、そのとき知ったのもアンサンブルの楽しさです。現在も室内楽が好きです。もちろんコンチェルトもいいですけれどね。ですから、「ソリスト」と呼ばれるのは、私、あまり好きじゃないんです。
今年は、カザルス・ホールで、「向山佳絵子とチェロの世界」というシリーズをやらせていただいているのですが、そのプログラムにも、室内楽の曲を多く取リ入れています。 無伴奏の曲ずくめの日は、チェロの音色をしっかり聴いていただいて、室内楽ではアンサンブルの中でのチェロの魅力を堪能していただけたら、と思っているんですよ。
楽器はこれまでいろんな物を弾きましたが、今はアマティとゴフリラーの2台、それに弓もありますから、いろいろ大変です。
楽器を1台にすればいいんでしょうけれども、持ち味がそれぞれ違いますでしょう?アマティは、何といっても音色が美しい。でも、オーケストラとコンチェルトを弾くには、パワーのあるゴフリラーを使うことが多くなっています。どちらも捨て難くて……。
尊敬する演奏家はたくさんいますけれど、その人たちと同じ演奏をするのではなくて、自分の世界、私だけの音楽を作り上げて行きたいですね。
それから、結婚もしたい。素晴らしい人に巡り合えたら、チェロをやめてもいいです。ショッピング大好き、遊び大好き。わりにミーハーなんです。