■日曜・月曜定休
Closed on Sundays & Mondays
10:30~18:30
112-0002 東京都文京区小石川2-2-13 1F
1F 2-2-13 Koishikawa, Bunkyo-ku,
Tokyo 112-0002 JAPAN
後楽園駅
丸の内線【4b出口】 南北線【8番出口】
KORAKUEN Station (M22, N11)
春日駅 三田線・大江戸線【6番出口】
KASUGA Station (E07)

私がパリに滞在していたある日、ガン氏が「都合の良い日に付き合ってもらえまいか?」と頼みに来た。彼が言うには、一緒に「ある家」に出かけて行って、ヴァイオリンの鑑定をして欲しいというわけである。
我々は、翌日の午前11時におちあうことに決めた。その日、馬車に乗って目的地へ向かうあいだも、ガン氏は事の詳細を説明しなかったことを詫びながらも、なぜか話題を他へそらそうとしていた。
ずい分と走った後、馬車はある何階建かの家の前に停った。
我々は二階の、ある家の一部屋に入った。そこには背の高い、中年の紳士が礼儀正しく立っていて、二人を丁重に招き入れた。数分後、部屋から出て行った紳士は、すぐにヴァイオリンのダブルケースを携えて戻ってきた。ケースを開けると、ヴァイオリンは一丁しか入っていなかった。
私は、黙ってヴァイオリンをガン氏に手渡すしかなかった。ガン氏が、「製作者は誰?」と聞いたが、私はただ首を横に振っただけだった。さらに、「同じ作者の他の楽器、あるいは全体的に特徴の似ているものを、かつて見たことがあるか?」と聞いてきたが、私は、「一度もないですね」と答えるしかなかった。