■日曜・月曜定休
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1984年から1993年まで、文京楽器が発行していた季刊誌Pygmalius(ピグマリウス)より、インタヴュー記事を復刻掲載します。当時、Pygmalius誌では古今東西のクラシック界の名演奏家に独占インタヴューを行っておりました。
レジェンドたちの時代を超えた普遍的な理念や音楽に対する思いなど、心に響くメッセージをどうぞお楽しみください。
ーヴァイオリンを始めたきっかけは?
父がヴァイオリンを弾いていたし、今、N響にいるいとこが同居してたのね。だから小さいころから自分もやるものだと思っていたみたい。
ー先生はどなたに?
3歳からピアノを習っていて、ヴァイオリンは5歳から久保田良作先生について始めました。江藤俊哉先生には高校3年からです。ピアノ大学生まで結構よくやったんですよ。だから今になってスコアを見る時なんか、ずいぶん助かってますね。
ーいつ頃からプ口になろうと?
小学1年の頃には、もう自分はプロになるんだって思ってました。父に「一人で食べていけるように」と、いつも言われてましたから。
ー遊ぶ時問はありましたか。
そりゃ、普通の女の子みたいに、バレーボールとか、スキーなんかやりたいなと思った時期もありましたね。でも、結構やったかな(笑)。
ーどんな生徒さんでしたか。
桐朋学園では、うまい人が五人いてね。いつも私はビリの方だったのね。どちらかというと人前へ出ると萎縮してしまうほうで…。
ーエリザベート・コンクールで一位をとられたから、相当舞台度胸がある人だと思っていましたが(笑)
演奏する時っていうのは、まるで絹糸を一本つかまえて、それにすがっているみたいなところがあるのね。それさえも離してしまったら何もないというか…。
だから自分で練習するしかないのね。それだけが白信にもつながるし…。あのゼルキンでさえ、いまだに一日5~6時間はさらうんですって。舞台の、あの緊張感とこわさを感じたら、さらわずにいられませんよね。
―どんな曲が好きですか
近づき難い曲が好きですね。スコアを見て、何でも良いからフレッシュに感じて興味が持てる曲でないと…。結局は、名曲になっちゃうんですよね。…ひとつだけ思うことは、何か、見えない物にまず魅かれて、そしてそれを追求していきたいということ。そうじゃないと、つまらないです、やってても...。
ー海外での活動が多いようですね
今、だいたい年に70回のペースで演奏していますね。今年は3月にアバド / ロンドン響、4月にプレヴィン / ロンドン響、ホルスト・シュタイン / ウィーン響と大事なデヴューがありましたし、年内に、ロンドンでベートーヴェンRPOとコンチェルト、ミラノのスカラ座、アムステルダム・コンセルトヘボウ、その後ニューヨークからイーストコーストを回る室内楽のマルボロ・ツアーもあるし。倉敷で、ヨーヨー・マとダブル・コンチェルトの予定もあります。
ー海外の場合、どちらかというと評価がダイレクトで厳しいのでは?
こういう仕事は、一回悪い点をとると、それを取り戻すのは十回位かかるんじゃないかしら。それに、五回70点を取るより、一回でいいから120点をとった方が良いですからね。
ーヴァイオリンについてのお考えは?
私の場合、楽器はピアノでもなんでも良かったんだと思います。ただ、たまたまヴァイオリンになったという…。だからそれほど詳しくはないの。表現の手段だと思ってますから。ただし、「弘法筆を選ぶ」なのよね(笑)。
それとストラディヴァリウスのような名器からは、反対に「教わる」こともありますし。
「表現したいもの(=内から出てくるもの)、弾くこと、耳で聴くこと」
この3つがうまく循環しているときって、うまくいくみたい。
ー尊敬する人は?
ゼルキンですね。毎夏、マルボロで一緒に弾かせていただくんですけど、それは私にとっては本当に素晴らしい体験なんです。何も強制しないんですよね。「あなたは本当に良いテイスト(センス)をもっている数少ない一人だから(One of very few)、感じるように弾け」と...。それでいて毎回違うんですね。十分間くらいの室内楽の曲をレコーディングするための練習ですが、一日2時間くらいずつ、十日間もかけるんですね。日本じゃとてもかんがえられないでしょう?
ー素晴らしいひとですね。
80歳と25歳なのにね、まるで仲間みたいに扱ってくれて。それでいて、近づけば近づくほど遠くなってゆく人です。うまく弾けるとほめてくれるでしょ、それで、「ありがとう、ありがとう」って連発したら、「It’s not you. It’s from the ….」と、天を指さしたの。その言葉、すごく気に入っちゃって...。また、やらなきゃ!って思いますね。
ー頑張って下さい。お忙しいところをどうもありがとうございました。