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オランダの子ども音楽週間 オンライン開催

ヨーロッパの長い冬はようやく終わりを告げ、欧州の北部に所在するオランダでも、比較的暖かい日が続いています。

ロックダウンやレストランなどのコロナ対策を緩めるのはまだ早いというものの、今月から一部のコンサートやイベントなどが実験的に再開されています。

試験的なイベントは、ソーシャルディスタンスを忘れずに取りながら、屋内でマスクを着用したうえで人数限定の演奏会が開かれたり、庭園や美術館が日時を限って公開されたりという試みです。事前にチケットを予約し、入場時間の40時間前以降に受けた簡易検査の陰性結果をスマートフォンのアプリを通して提示することで参加できます。

一方、ほとんどの劇場やオーケストラなどの音楽団体は、5月以降の演奏会予定をウェブ上で公開してはいるものの、ストリーミング配信コンサートを除いて、確定しているコンサートがないのが現状です。通常のようなシーズン再開の見通しは立てられておらず、先行きはまだ不透明なままです。

そのような状況下で、4月9日から18日までの合計9日間にわたって、Kinder Muziek Week(キンダー・ムジーク・ウィーク)、訳して「子ども音楽週間」という、オンラインで楽しめる子ども向けの音楽祭が開催されました。
0歳から12歳までのオランダ国内の子どもたちを対象としたイベントで、参加は完全無料。プログラムには、音楽をあらゆる子どもにとって身近なものにするために役立つさまざまな試みが盛り込まれていました。

子どものための音楽フェスティバル

2019年創設のフェスティバルKinder Muziek Week(子ども音楽週間)は、オランダ各地におけるジュニアの音楽教育に関わる団体や財団、コンサートホールやオーケストラなどの協力で実現されました。
昨年に引き続き、今年もコロナ対策のために2年連続でのオンライン開催になります。

公式サイトやSNSのページには、多彩なジャンルの音楽に触れ、楽器を始めるきっかけになるようなウェブコンテンツが用意されています。

名高いコンセルトヘボウでのオープニングコンサート

同フェスティバルの開幕初日である4月9日には、オランダ随一のホール、アムステルダムのコンセルトヘボウでオープニング・コンサートが開かれ、映像はストリーミング配信されました。

ロッテルダム出身の作曲家Ivo Kouwenhovenの作品などを演奏したのは、ジュニアプレイヤーとネーデルランド・フィルハーモニー管弦楽団メンバーの混合オーケストラです。さらにジュニアの歌手グループも加わり、大人顔負けの華やかなステージを繰り広げました。

動画では、真剣な面持ちで弓を動かすジュニアプレーヤーたちの勇姿が見られます。


ジュニアの楽器プレーヤーや作曲家が活躍

同フェスティバル期間中には、ヴァイオリンとチェロを学ぶ生徒たちによるオランダロッテルダム・ユース・弦楽アンサンブルがロックダウン前に録画したコンサート映像も公開されました。
また、公募で集まった曲やオンラインワークショップで作られたジュニア作曲家による新曲プロ奏者が初演する「最年少作曲家コンサート」も開かれました。
全体的に、クラシック音楽に始まり、ジャズやポップス、現代音楽の要素もプログラムの随所にしっかりと盛り込まれているところがオランダらしいですね。

楽器を始めたい子どもへのサポート

同フェスティバル公式サイトでは、コロナ禍によって経済的な困難に陥ってしまい、子どものための楽器が買えなかったりレッスンが続けられなかったりする家族がいます。
同フェスティバルの公式サイト上では、資金の問題があっても「楽器を始めたい」・「レッスンを続けたい」という子どもを持つ家族へ経済的な支援をする制度も紹介されています。

実際のサポートに関わるのはJeugdfonds Sport & Cultuurという財団で、音楽のみならず、演劇やスポーツなどのレッスンや道具にかかる資金を補助する制度が用意されています。2020年には7万人以上の子どもたちが利用した、オランダ国内の人のためのサポートシステムです。
2019年の打楽器ワークショップの様子

参加型イベントも多数

さらに、音楽教師や教室とのコラボレーションで、Zoomを使ったオンラインレッスンやレッスン動画も用意されました。
内容はピアノや歌などメジャーなものから、6歳以上を対象にしたDJワークショップまでさまざまで、音楽のレッスンのイメージをつかむために役立つコンテンツです。

その他、ソプラノ歌手やチェンバロ奏者、打楽器奏者など、音楽家へのインタビュー動画シリーズも期間中に公開されました。演奏家という職業を知るために役立つ内容です。

全体的に、演奏映像をそのまま配信するのではなく、さまざまな年齢の子どもに親しみやすいように、テレビ番組風に司会や解説を入れたり、効果音を盛り込んでユーモアのある動画にしたり、という仕掛けが施されていました。

国内向けのイベントなのでほとんどのコンテンツはオランダ語ですが、いくつか英語コンテンツもあるところから、英語がどこでも通じるオランダらしい国際性を感じます。

子どもを重視するオランダらしい音楽祭

昨年3月にロックダウンが始まり、イベントの開催が禁止となってから、オランダの学校などの教育機関全般も影響を受けています。一時的に閉鎖をまぬがれませんでしたが、現在は、オンラインの学習システムを駆使しながら、人数を分けて登校するというケースが見受けられます。

個人的に、オランダのコロナ対策で何より印象的だったのは、最初のロックダウンの時から「子どもたちに与える影響」が最重要事項の一つとして議論にのぼっていたことです。
実際に、一番制限の多かったロックダウンの期間でも、町中の公園で遊ぶ子どもたちの歓声が途切れることはありませんでした。

オランダは「世界一子どもが幸せな国」といわれ、子どもを取りまく環境への関心の高さが国際的に知られています。
子どもを重視するオランダらしい音楽祭の一つとして、今後にも注目していきたいフェスティバルです。
取材・文 安田真子