■日曜・月曜定休
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ある日、私はパリのガン・ベルナーデル商会を訪ねた。ちょうどガン氏が、駒と弦をかえたばかりのヴァイオリンを試奏しているところだった。彼は、この調整に四苦八苦していたのだ。何回も駒をつけたり、はずしたりしたあげく、ようやく納得のいく位置におさまってくれたのだと言いながら、そのヴァイオリンを私に手渡した。
「誰の作品と思うかね?」
私には、それが、ベルゴンツィであるとすぐ判った。表板にはかなり割れ傷があり、あちこちに新しいニスが塗ってある。ところが楽器に立てた駒と弦の張り方を見て、非常に驚いた。駒は異常に低くセットしてあり、その為に弦が普通よりかなり指板側に近づいている。
その上、ネックの形も特異であった。とっさにシヴォリのヴァイオリンのことが頭に浮かん だ。シヴォリの持っているヴァイオリンの状態にとても似ているのだ。
写真:“FOUR CENTURIES OF VIOLIN MAKING”,John Dilworth,page80,626
やがて彼がヴァイオリンを弾き終わるや、ガン氏は「あなたのような芸術家が弾くと、音色もとても素暗らしい。」と大喜びした。そして「音質の点でも音量の点でも、他のどこの楽器よりもイタリア製のヴァイオリンがはるかに優れているということがわかりますね。」と、思わず口走ってしまった。
ところが 「それはまだ何とも言えないでしょう。」 とシヴォリは答えた。そして、我々は実際、全く驚くべき結果を見…いや、聞いてしまったのである。
シヴォリは、ヴィヨームを手にした。そして指ではじいただけで調弦をしたが、その素早さに、我々は、ただもう早く彼の出す音を待ち構えた。ハンカチがいつものようにカラーの上に当てられ、ただちに敏速な指の動きとともに、指が弦の上を走り始めた。