■日曜・月曜定休
Closed on Sundays & Mondays
10:30~18:30
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1F 2-2-13 Koishikawa, Bunkyo-ku,
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後楽園駅
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KASUGA Station (E07)
当時9歳だった私も、彼らが来ると、飛ぶように畑の中を横切り、夢中で彼らの演奏に耳を傾けたものだ。私の父はすでに亡くなっていて、緑色の袋の中に入れたヴァイオリンを1セット遺していたが、父の亡き後誰も弾く人がいないので、台所の壁に吊るしたままになっていた。
ある夜、2人の青年がちょっと休ませて欲しいと言って、私の家の台所に入ってきた。すぐに緑色の袋に気が付いて、「もしやクレモナではないか!」と言った。クレモナという言葉を聞いたのはその時が初めてだったが、それ以来、「クレモナ」という言葉が耳から離れなかった。
彼らは、その袋の中の楽器を手に取って、素晴らしい絵画でも鑑賞するかのように、穴のあくほど何度も何度も見つめていた。そのヴァイオリンは、古くて傷もかなりあった。
しかし残念ながら音を出してみようにも弦は2本しか付いていなかった。弦を2本張るのに、2~3シリングかかると聞いた母は、「そんな馬鹿げたことにお金を使いたくないから、元の通りにしまっておくように」と言った。2人は、あれこれ母の気を引こうとしていたが、母は結局、弦を買うことに不承知だった。
そのうち、私に一番甘かった義父が弦を2本買うことにしたので-多分、私が彼らの音楽が聞けなくて落胆していたからかもしれないが-さっそく、その場でヴァイオリンの音出しが出来た。
期せずして彼らは、「素晴らしい!これこそクレモナの音、最上級のひとつだ」、「今まで聞いた中のどの音より素晴らしい」と絶賛した。