手順④ 全パートの映像をまとめる
各演奏者の映像が揃ったら、映像をまとめて編集します。
動画では、
映像としてのビジュアルの魅力もとても大切。映像編集を担当する人の腕の見せどころです。
ポイントは、
音楽に合わせて映像を編集すること、
視覚的に楽しくかつ音楽の邪魔にならないように気をつけることだそうです。仕上がった動画では、ソロの部分はもちろん、合いの手、特徴的な奏法のパートの映像がぱっと現れたり、大きく表示されたりと映像としての面白さが光っています。編集を担当する人が事前にある程度仕上がりを想像してからメンバーに指示して撮影してもらことのが大切なのだそうです。
「基本的にはメンバーに通しの動画を撮ってもらっているので、アップしたり画面が切り替わっているように見えるのは、それを僕が切り取って編集しているんです」(米光さん)
衣装などのちょっとした工夫も、視覚的な効果を発揮しています。
「色味が揃っていた方がいいかなと。コスプレになると見てる人には一番面白いけれど、そこまでいかなくても手軽に『何色で揃えてきて』と言うとやる人も負担じゃないし、
統一感があっていいかなと思います」(米光さん)
音と映像を別々に録ることの利点
今回のように音と映像を別々に録ることで、動画のクオリティを上げられるポイントがいくつもあります。
まず、音を録る時は
音に集中でき、何度も録り直して、最終的にミスのない良いテイクを使えること。さらに、編集時に音の細かい調整を加えることも可能です。
一方、映像を撮る時は視覚的なことに集中できるので、
笑顔を見せたり、動きをつけたりすることができます。ちょっとした遊び心があったり、演奏者の楽しそうな表情が見えると、動画を見ている人もつい笑顔になってしまうこと、ありますよね。
「クオリティが低かったら『コントラバス五重奏だ、珍しい』で1回見て終わってしまう。でも中身を見て、
クオリティが高かったら2回、3回くらいは見てもらえるかなと思います」(米光さん)
「音と映像が別というのはありがたいです。動画の第2弾では一番上のパートを弾いていたのですが、意外と難しくて。音に集中していないと、音程やフレーズとかも考えてる余裕がなくなる。実際、絵的にはめちゃめちゃ楽しそうに弾いてるんですけど、(録音のために)弾いてるときはあまり余裕がないので、そばから見ると『無』って顔になっていると思います(笑)」(水野さん)
思いが伝わる動画作りのポイント
当然のことながら、『お客さん』の顔が見えない動画のための演奏は、演奏者にとってコンサートでの生演奏とは大きく異なります。
「演奏会だと、『今日はお客さんいっぱい入っているな』とか分かるけれど、動画はできても、たくさんの人に見られるのかどうか、その時はまだ分からない。それが
ある種面白いところでもあるし、違いですね」(米光さん)
「今回のテレワークの場合は、
常に自分がアウトプット側にいるというのがすごく印象にありました。生で演奏しているときは、お客さんの反応やその場で一緒に弾いている人たちの空気とかを
インプットしながらアウトプットするみたいな感じがある。(動画のための演奏には)それがないので、みんなが録ってくれた音を聞いて、細かいところを『ああこうしたいのかな』と想像の世界で……。やっぱり得られる情報の量が格段に少ない。
普段の演奏とは別物かなという気がします」(水野さん)
動画の良いところは、
何万人もの人に音楽を届けられる可能性があること。さらに、それぞれの人が都合の良い時間と場所で楽しむことができます。
見る人の心に届く動画づくりの秘訣は何でしょうか。
「
音のクオリティを上げること。あと、楽しさを伝えるために、
動画のテンポも大切かなと。テレワークでは固定で4画面があって最初から最後まで同じというのも多いと思うんですが、曲に合わせて動かしたりとか」(米光さん)
視覚的に変化があるのは見ていて楽しい動画の重要なポイントですが、やりすぎは厳禁です。何よりも大切な演奏を邪魔しないように気をつける必要がありそうです。
「
演奏も聞いてもらいたいし、絵も見てほしいので、バランスが難しい。画面が4分割だけの動画だと演奏を聴くことがメインだし、画面がうるさいと演奏に意識が行きにくく、集中できない。そういう意味で、米光くんの編集は画面が見やすいし、コントラバスという楽器の性質があるかもしれませんが曲も聞きやすくて
バランスが取れているような気がします」(水野さん)
現在、
第3弾の動画も準備中とのこと。楽しみです。