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弓作りにとって一番重要なこと、それは"素材"である。


弓作りにおいて最も重要なものは何ですか?

99%、素材といえるでしょうね例えるなら、日本の寿司と一緒です。  最高の食材を活かすには最高の職人の技が必要ですよね。でも、味を究極的に決めているのは、素材の持ち味ではないでしょうか。弓作りも同じ。弓はシンプルな構造で成り立っている分、究極的には素材がその品質を決めるのです。

これは、2014年、現代の弓製作の巨匠であるチャールズ・エスピー氏が文京楽器に来店した際に、弊社スタッフと交わされた実際の会話。弓作りにおける素材の重要性を象徴的に表現している興味深いエピソードです。

エスピー氏 オフィシャルブログはこちら
写真:チャールズ・エスピー氏

"素材"をもとめてブラジルへ


1983年に誕生した日本製弓ブランド、アルシェ。

世界最高の弓を自ら作り出そう」という挑戦は、すべての人に、きちんとした品質の弓を使っていただきたいという願いから始まりました。当時、市場に流通している分数用の弓は、大人サイズの弓を短く切っただけの物しかなく、子供が弾くには重すぎて困ると、演奏指導者の方からの悩みが多く聞かれていました。そこで、文京楽器は、ドイツの大手弓メーカーに、子供用の正しい寸法で設計した弓をオーダーしたところ、コストが合わないの一言で断られてしまいました。
このままでは、将来有望な演奏家が育たなくなり、日本の音楽分野のレベルにも関わってくると危機感を感じた弊社は、自らが主導となって、弓の製作会社を立ち上げたのです。

アルシェは創業当時から、ペルナンブコ材の品質こそが弓づくりの生命線だと認識しており、1980年代初頭には最高品質の材料を大量に買い付け、以来大切に使い続けてきました

そして2014年、ペルナンブーコ州のさる弦楽器製作者が、一生をかけてコレクションしてきた最高品質のぺルナンブコ材を、その価値の分かる方に売却したいとのオファーを受け、再びブラジルへ。そこで待っていたのは、18世紀にトルテが採用していたであろうほどの、赤いルビーのように光り輝く最高の”素材”でした。


写真:ぺルナンブコ材ストック



地球の財産として


前章で述べたように、ペルナンブコはブラジルの大西洋岸林に生育する木で、ヨーロッパにおける染料等の需要拡大、およびブラジルにおける都市開発などによる伐採が進み、この500年で元々の規模の90%が失われてしまっています。絶滅危惧種に認定され、2007年にはワシントン条約でその輸出入が規制されている、貴重な天然資源なのです。


2000年には設立されたペルナンブコの生態系保全を目的に研究や啓蒙活動を行う団体、IPCI(International Pernambuco Conservation Initiative
)がアメリカにて設立されました。

2004年からはブラジル政府機関の協力の下、PPB(Programa Pau-Brasil)として植林活動を本格的に始動し、賛同する250名以上の弓製作者や多くの楽器製作者らによる寄付金は、これまでに35万ドルが集まっています。
高い密度による強さとしなやかな柔軟さを併せ持ち、熱処理による反り形状を保つことのできるこの"素材"は、現在においてもなお、弓製作に使われる最高の材料として世界の弦楽に欠かせないもの。この貴重な地球の財産をたいせつに使っていくことが、弓製作者、並びに弦楽器奏者の使命といえるでしょう。

また、IPCIのぺルナンブコ保全活動が次世代の弓製作者へ最高の"素材"を提供し、世界中の弦楽器奏者へ最高の弓を届けることへつながっていくことを忘れてはならないのです。