■日曜・月曜定休
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1984年から1993年まで、文京楽器が発行していた季刊誌Pygmalius(ピグマリウス)より、インタヴュー記事を復刻掲載します。当時、Pygmalius誌では古今東西のクラシック界の名演奏家に独占インタヴューを行っておりました。
レジェンドたちの時代を超えた普遍的な理念や音楽に対する思いなど、心に響くメッセージをどうぞお楽しみください。
私の音楽歴は少し風変わりかもしれませんね。小さいときはピアノを習っていたんですが、その先生とどうもうまくいかなくてやめてしまったんです。しかし、何か音楽は続けたいと思っていました。
13歳のとき、学校で先生が「この楽器をやりたい人」と言ったんです。「ハイ」と手を挙げて、やり始めたのがコントラバスとの出会いでした。
放課後もレッスンに通っていましたが、そこでは現在、指揮者になっているジェームス・レヴァインとも一緒でしたよ。
少し大人になって、「将来は音楽家になりたい」と言ったら、弁護士の父は怒りましてね、「出ていけ」…(笑)。ヴァイオリン店で働いたり、ジャズ・バンドで演奏したりして学費を稼ぎました。
ある日、私の街にトミー・ドージーのジャズ・バンドがやってきたんですが、病気になったベース奏者の代役をつとめた私は、そのままバンドに加わって各地を回ってしまったんです(笑)。
もちろん、仕事の合問に練習を欠かしませんでした。でも、私にとっては、実にいい音楽体験になりましたね。
私の音楽表現というと自身で演奏すること、人に教えることなど、さまざまな手段がありますが、「自分で楽器を作る」ことも大切な音楽表現のひとつです。自分の思う音楽を表現できる楽器が作れたら、これ以上のことはないでしょう?
楽器に対する愛情が人並み以上だとしたら、それはヴァイオリン店で働いている頃に、すでに育まれていたのでしょうね。
好きな作曲家をひとり選ぶのは、とても難しいですが、強いていえばボッテシーニ。面白い作曲家です。コントラバスのためのすぐれた作品をたくさん残していますが、コントラバス奏者にとっていわば、パガニーニのような存在ですね。今、ボッテシーニの作品の録音を進めているところです。
私のことも含めてですが、最近、コントラバスのソロ活動がたいへん盛んになりました。オーケストラの目立たない場所から、こうした表舞台に出る機会が増えることは、とても嬉しいことです。
考えてみると、日本にはずいぶん来ていますねぇ。1970年に初めて来日して以来、通算すると1年以上日本に滞在している勘定になります。昨年(1990年)も最晩年のバーンスタインとともに、ロンドン交響楽団の客演奏者として来ましたし...。
この20年で日本の聴衆は、クラシックを深く味わい、正しく評価するという点で、ずいぶん成長したと思いますよ。マーラー・チクルスで、あの難解な第9交響曲が、一か月に2回も演奏されているのを見てもそのことが分かります。20年前には、想像もつかない事でした。
今回、私たちが披露したメシアンの大作にしても、ロンドンやバーミンガムの聴衆より日本の方々のほうが高く評価してくれたと思えるくらいです。
日本の演奏家を目指す人たちに、私がメッセージを贈るとしたら、「音符と音符のあいだにあるものに注意を向けることの大切さ」でしょうか。完璧に演奏することが目標ではありません。どうぞ、「ほんとうの音楽」を奏でてください。現在、トーマス・マーティン氏は息子のジョージ氏と共に、「トーマス&ジョージ・マーティン」工房を運営しています。
▽Thomas & George Martin Violin Makers