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女性製作家の時代「伊東 渚」

2007年よりイタリア在住の伊東渚は、クレモナ近郊の町カザルブッターノに拠点を据え、日々楽器作りに取り組んでいる。弦楽器製作に興味を持ったきっかけは、楽器店に勤務したことと、製作者の佐藤正人との出会いだった。
―弦楽器製作者を志したきっかけを教えてください。

「工房で作業をする職人さんの手仕事に興味を持ち、修理を始めました。故佐藤正人氏と知り合い、アドバイスをもらいながら、本格的に修理を勉強し始めた頃、『修理をやるなら一から楽器を作ってみなさい』と言われたんです。製作を始めるととても楽しく、真剣に学ぶなら本場イタリアでと佐藤氏が背中を押してくれた事もあり、クレモナの弦楽器製作学校に入学しました」
 
クレモナでは、師匠であり夫のニコラ・ラッザリに在学一年目から修業を続け、現在でも共に製作活動を行っている。
―製作を活動の中心にすると決めた契機はありますか?

「私はイタリアに来たのが他の人より遅かったので切羽詰まった感がありつつ、どうしても製作をしたいという気持ちでずっと続けています。主人であり師匠のニコラの楽器を見て弟子入りさせてもらった時から、もう無我夢中で。仕事に対してすごく厳しい人なので、ついていくのに目いっぱいという日々の繰り返しで、ここまで来ました」

 職人仲間に囲まれ、活動を続ける中で、生活の中に根付く弦楽器製作のあり方を肌で感じているようだ。

「イタリアで製作している人たちの中にいると、楽器に美意識、個性のようなものがにじみ出ていて、生活のリズムと楽器製作が直結しているのを感じます。楽しみながら皆作っていますね」
―製作者として喜び、やりがいを感じるのはどのような瞬間ですか?

「切り出したばかりの木材が沢山の工程を経てやっと楽器となって完成した瞬間、音が出た時は、達成感や嬉しさや安堵感など、色々な感情が入り混じって、毎回なんとも言えない感情になります。その気持ちと『次はもっと良い楽器を作りたい』という欲求が活力となり、やりがいのある仕事になっています。
また、私の作った楽器を選んで弾いて下さっている演奏者の方からご連絡いただいたり、演奏を聞かせてもらう時は本当に充実し、喜びを感じます」

アマティやストラディヴァリ、グァルネリのクレモナの伝統的な様式に加え、モダンイタリーの楽器などからもインスピレーションを得て、楽器製作を続ける伊東。楽器を通して、イタリアの豊かな文化と深くつながる弦楽器製作の在り方をも伝えてくれる。

 
写真: Violin Migiwa ITO Guarneri model
伊東渚(いとうみぎわ)
1979年横浜生まれ。国立音楽大学卒業。渋谷の佐藤弦楽器、佐藤正人に出会ったのをきっかけに弦楽器製作を始める。同氏のもとで楽器製作の基礎を学んだのち渡伊。07年クレモナ国際弦楽器製作学校入学。08年よりニコラ・ラッザリの工房に通い製作を学ぶ。学校ではジョルジョ・スコラーリに師事。2011年同校を卒業。09年第3回イタリア、ピゾーニェ弦楽器製作コンクール、ヴァイオリン部門2位。2015年第4回スロバキア、アルヴェンシス国際弦楽器製作学校ベストウーマンヴァイオリンメーカー賞受賞。2016年北京国際弦楽器コンクールファイナリスト、8位入賞。
取材・文 安田真子