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女性製作家の時代「やち 陽子」

やち陽子は日本で会社勤務を経験した後、クレモナに居を移し、弦楽器製作を学んだという経歴の持ち主だ。2007年に製作学校を卒業してからもさらに修業を重ね、プロ登録を経て、現在まで同地で製作を続けている。
「クレモナはバイオリンの聖地であり、職人仲間と互いに切磋琢磨出来るから、また製作に関する情報量も多いので、活動の場所として選びました」

高校・大学と部活動でヴァイオリンを演奏していたやちは、大学の卒業旅行で初めてクレモナを訪れた際に、運命を感じたという。

「マエストロ・コニアの工房を見学して、クレモナにいつか戻ってくることを悟ったんです。いったん会社勤務しましたが、情熱を捨てきれず、7年後の2003年に一念発起してクレモナの弦楽器製作学校に入学したんです」

イタリアで活動を始めてから20年ほどが経つ。現在の主な活動は、製作のオーダーを受けたうえで、専門家として考える演奏者にとって最適な楽器を手がけることだ。

―製作者として喜び、やりがいを感じるのはどのような瞬間ですか?

「製作者としてやりがいを感じるのは、5弦チェロや大きなサイズのヴィオラ など、世に存在しない楽器を設計して、思い描いていた音が鳴った時です。喜びを感じるのは納品してお客様に喜んでいただけた時、また、数年後のメンテナンス時にもご満足いただけている時ですね」

製作者として、演奏家との密な関わりを大切にしている。
 
「弦楽器だと、他の楽器にはない密な関係が演奏者の方と築けるのが嬉しいです。メーカーさんの作る管楽器とは違って、弦楽器だと関係性が感じられる。使ってくださる方を思い描いて頑張って作るというところがあるので、展示会が無く、お会いできない期間はつらかったです」
―今後挑戦してみたいことを教えていただけますか?

「以前、1年間かけてカルテットを作ったことがあるのですが、とてもやりがいがありました。日々自分が変わっていき、スタイルも変わっていくので、4台を同時進行で作ったんですよ。演奏会もあったので音の調整もさせてもらい、勉強になりました。終わった後はもう放心状態になるくらいでしたが、その後、弦楽オーケストラを作ってみたいなと思ったんです。大変ですが、夢は大きく!」

日々の製作の先には大きな夢がある。一つひとつの楽器に思いをのせて、製作活動はより豊かに続いていく。

 
写真:Violin Yoko YACHI
やち 陽子(やち ようこ)
1974年大阪生まれ。府立清水谷高校・関西大学のオーケストラでヴァイオリンを演奏、会社勤務ののち、03年クレモナ弦楽器製作学校に入学、07年卒業。ステファノ・コニア、ロレンツィオ・マルキ、マルコ・オジオに師事。07年ピゾーニョ・イタリア国内製作コンクール・若手ヴァイオリン部門優勝(日本人女性初の製作コンクール優勝)。
公式HP:https://www.yokoyachi.com/
取材・文 安田真子