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連載『心に響く、レジェンドからのメッセージ』

1984年から1993年まで、文京楽器が発行していた季刊誌Pygmalius(ピグマリウス)より、インタヴュー記事を復刻掲載します。当時、Pygmalius誌では古今東西のクラシック界の名演奏家に独占インタヴューを行っておりました。
レジェンドたちの時代を超えた普遍的な理念や音楽に対する思いなど、心に響くメッセージをどうぞお楽しみください。

第36回 小林美恵 / Mie Kobayashi

引用元:季刊誌『Pygmalius』第34号 1991年7月1日発行
■小林美恵 プロフィール

名古屋生まれ。4歳からヴァイオリンを始める。東京芸術大学器楽科卒業。'83年第52回日本音楽コンクール第2位。'84年第29回海外派遣コンクール河合賞受賞。'88年第4回シュポア国際ヴァイオリン・コンクール第2位及びソナタ賞受賞。'90年ロン=ティボー国際コンクールのヴァイオリン部門では、優勝と同時に「現代作品演奏賞」と「リサイタル賞」も受賞。現在、ソリストとしても室内楽奏者としても、精力的に演奏活動を行っている。

1. フランスに惹かれて受けたロン=ティボー


ロン=ティボー国際コンクールのヴァイオリン部門で、初めて日本人が優勝という朗報は、まだ記憶に新しいところ。今回はその優勝者小林美恵さんに、ヴァイオリンとのかかわりやコンクールについてお話しいただきました。中学時代は陸上部で活躍したという健康的で可憐な小林さん。今後の活動がますます楽しみな演奏家です。


ロン=ティボーを受けるまで、フランスって行ったことなかったんです。以前からフランスの作曲家、ドビュッシーやサンサーンスに興味があって、ここ数年、フランスの作品に取り組んでいたので、自分の演奏が、本場でどういうふうに評価されるか知りたくて……。たまたま、そういう時期に、3年に1回のコンクールがあったので、受けてみようと思ったんです。だから、時期が違ったら、受けなかったかも......。


チャイコフスキーとロン=ティボーは、全く違うコンクールなんです。でも、出場者の顔ぶれは似たようなもので、「あら、こっちにも来てたの?」なんて。チャイコフスキーの場合、予選から本選まで約1ヵ月で、ロン=ティボーは10日位。

モスクワでは、一次予選と二次予選の間か1週間ほどあって、その間に、曲を練り直せるけれど、ロン=ティボーでは、今日受かったら明日も弾かなくちゃいけない。あと、ロン=ティボーの方は、出場者はホーム・ステイなんです。希望すれば、ホテルにも泊まれますが。もともとは国がやっていたチャイコフスキー、受け入れてくれる家庭があって、市民のコンクールという感じのロン=ティボー、という違いもありますね。


ロン=ティボーのときは、食べ物も練習場所もすべてうまくいきました。精神的にも安定していましたし。ホーム・ステイ先のご夫婦も応援に来てくれて......共働きで翌朝早いので、「あなたのを聴いたら帰るね」って。


愛器はプレゼンダ。これの前もプレゼンダだったから、けっこう長い付き合いですね。音色がすごく明るいんです。それと、パワーがあって、大ホールでオーケストラと共演しても、きちんと聞こえるのが強みかしら。


別に、小さいときからヴァイオリン一筋だったわけではないんです。よく遊んで、クラブ活動も勉強もして、時間があったらおけいこをして。普通に子供時代を過ごしてきて、高校を受験するとき、音楽の方に進むかどうか迷ったんです。ただ、芸大付属高校の入試は、普通高より先にあったから、ともかく芸高を受けてみて、落ちたらヴァイオリンやめようって。そしたら受かっちゃった。

2. 弦楽四重奏への意欲

一番影響を受けたのは、堀正文先生。高1のころ初めてお会いしたんですが、それまで自分のやってきたヴァイオリンとは違うものを知ったというのかしら。今まで何もやっていなかったんだということが、レッスンに行くといやというほど分かるんです。右手の使い方、シフトの仕方から考え方に至るまで、何から何まで教えられたというか。まだ完全にマスターできていないけれど。


今は、ソロ活動の他に、水戸カルテットやATMアンサンブルでも弾いています。ベートーヴェンにしてもモーツァルトにしても、協奏曲でしか知らなかった作曲家の別の面を知ることができますね。それに、アンサンブルは一番の基本だから、そういう面でも勉強になります。弦楽四重奏は、一番シンプルな形で一番充実しているっていうんでしょうか。とにかくいい曲が多くて、片っ端から弾きたいくらい。


作曲家がいて、楽譜があって、私が弾くわけですよね。私は、作曲家のことは楽譜でしか分からないので、そこからいろんなメッセージを私なりに読み取って、伝えていけたらと思っています。