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イタリア北部の都市 マントヴァの名匠


第2回はマントヴァ派の伝統を近代へ継いだことで高く評価されている、ステファノ・スカランペラ (Stefano Scarampella) を紹介いたします。

生い立ち


ステファノ・スカランペラは1843年にブレシアで生まれ、家具職人だった父パオロの仕事を手伝いながら木工の基礎を習得し、ほぼ独学でヴァイオリン製作を学びました。

1890年頃から本格的に楽器製作に取り組むようになり、1902年から1915年頃にかけて製作者としての地位を確立しました。

楽器のモデル


スカランペラの楽器は、ブレシアンスタイルの影響を受けたとされるグァルネリ・デルジェス(Guarneri Del Gesu)をはじめ、マントヴァのオールドメーカーであるトマッソ・バレストリエリ(T.Balestrieri)、そしてストラディヴァリ(A.Stradivari)などを参考にしています。その作風は緻密で洗練されたというよりも、どこか素朴で味わい深さを感じさせます。音色は力強く魅力的であり、彼の楽器のファンになる演奏家も多いのです。

裏板にはイタリア原産のカエデ材を使用することもあり、こうした特徴はオールド・マントヴァ派の影響を感じさせます。

ニスは温かみのあるオレンジブラウンや燃えるようなディープレッドなど幾つか種類があるが、いずれも彼の作品にマッチした美観を与えています。

製作上の功績


スカランペラによって100年以上に渡る近代マントヴァ派の製作メソッドが確立されたといって良いでしょう。

彼にはただ一人、ガエタノ・ガッダ(Gaetano Gadda)という弟子がおり1920年頃からスカランペラは体調不良を期に製作の殆どをガッダに任せるます。そのため、以降の作品はラベルのみスカランペラというものが多くなります。ガッダ自身も非常に優れた作家であり、師匠と見分けがつかない見事なレプリカを製作しました。そしてスカランペラの死後、実質工房を継いだガエタノ・ガッダは、息子のマリオ・ガッダ(Mario Gadda)とともに20世紀最高の名職人として活躍したのです。

第3回はトスカーナ派のヴァイオリン製作家アントニオ・グラニャーニ(Antonio Gragnani)を紹介いたします。

文:窪田陽平