■日曜・月曜定休
Closed on Sundays & Mondays
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1F 2-2-13 Koishikawa, Bunkyo-ku,
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後楽園駅
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春日駅 三田線・大江戸線【6番出口】
KASUGA Station (E07)

過去3回にわたったお届けしたボローニャ国際音楽博物館・図書館(Museo Internationale e biblioteca della musica)の記事も、今回が最終回です。
博物館のコレクションの大部分は、清貧のフランチェスコ教会に属したマルティーニ神父がお金ではなく頭を使って集めた品々です。その大部分を占めるのが楽譜や教本などの音楽にまつわる紙資料でした。
とくに貴重な楽譜や書物は博物館に展示されていますが、その他の資料は併設の音楽図書館に所蔵され、一般の人にも問い合わせればアクセスできる状態で保管されています。
同図書館司書を務めるクリスティーナさんの案内で、ライブラリー部門を紹介してもらいましょう。
2004年のボローニャ国際音楽博物館のオープンと同時に、この音楽図書館が今の場所に設置されました。
現在では、コレクションの基となったマルティーニ神父の1万7千点からさらに点数が増え、10万点以上もの音楽関連の資料が保管されています。
音楽分野の研究者や学生、愛好家のために用意された、音楽について誰でも多角的に学べる空間です。
「過去には、図書館の資料はボローニャの音楽高校や音楽院などを転々と移動してきました。ヴィヴァルディやロッシーニの自筆譜など、貴重な楽譜もたくさんありますし、印刷された楽譜や教本などの資料も数多く所有しています。アーカイブには、過去にボローニャの音楽学校に提出された宿題まで残されているんですよ」
そう言って、博物館と図書館をつなぐ廊下を先導して歩くクリスティーナさん。かつては音楽ジャーナリストの仕事もしていた女性で、現在は音楽図書館の司書という天職に日々力を注いでいるスタッフです。
マルティーニ神父が集めた貴重な楽譜や音楽関連の書籍などのコレクションは膨大です。神父がさまざまな国の弟子や楽譜コレクター、音楽家たちとやりとりした手紙だけでも6000通を超え、図書館の一室を占めています。
神父のコレクションは、世界的にみても生前から個人所有の音楽図書館としてすぐれたものでした。イギリスから来た研究者を驚かせたという逸話も残っています。
自身のコレクションが後世に及ぼす影響の大きさをきちんと理解していた神父の心配ごとは、家族がいない自分の死後、コレクションが誰の手に渡るのかという点でした。
せっかく集めた資料が散逸したり、悪意ある人の手に渡ったりすることなく、後世の人々の役に立つようにどうすればいいのか考えた神父は、当時のローマ教皇に嘆願書を送ることを決めます。
個人としてものを所有することを許されていなかったフランチェスコ教会の神父でありながら、自分の死後も大切な音楽資料コレクションを形を変えずに保管してもらうように頼んだのです。
マルティーニ神父の熱意が伝わったのか、ときのローマ教皇は訴えを聞きいれ、神父のコレクションに手を出す人は永遠に破門する、という厳しい罰則をもうけることを決めたそうです。図書館には、その手紙も保管されています。
かといって、現在に至るまで、3世紀の間コレクションが完璧な形で残されていたかといえば、そうではありませんでした。
管理が行き届いていない状態で保管されていた時期があり、マルティーニ神父に宛てたモーツァルト直筆の手紙など、価値の高い資料がいつのまにか盗まれてしまったことなどがあるそうです。
(写真/ガスパリが1枚ずつ手書きで作った目録)
それでも、コレクションのほとんどは無傷で残され、現代の私たちにも触れられる状態で伝えられています。そのかげには、まとまった形のコレクションの価値の高さを知り、守り続けてきた人々がいます。
その一人が、19世紀半ばにボローニャ高等音楽高校の図書館司書を務めたガエターノ・ガスパリという人物でした。作曲家で音楽学者でもあったガスパリは、コレクションの整理に大きく貢献しました。
その方法が、カタログの作成でした。1856年に同学校の司書になったガスパリは、四半世紀をかけて、1つの資料につき1枚のカード型を作成。ただ保管されていただけのコレクションの全体像がわかるように、楽譜や本をそれぞれ読み込んで内容を書き留め、カードとして整理をして目録を作りました。後世の人が研究に役立てるための準備を整えていったのです。
ガスパリの目録は、アルファベット別の木箱に整理され、現在でも図書館に保管されています。さらに、薄給にもかかわらず、2000冊ほどの音楽関連の書籍などの資料を個人的に集め、マルティーニ・コレクションに追加したというガスパリ。
マルティーニ神父の魂を継いだボローニャ人のひとりです。
のちに、重要な作曲家の楽譜をまとめた全集などの大型本も買い集められ、音楽図書館のコレクションは充実していきました。
19世紀末には、かのレスピーギなどもこのボローニャ音楽高等学校で学んでおり、勉強のために図書館の蔵書が役立ったはずです。
1940年初頭に同音楽学校が国有化されたことで、コレクションはボローニャ市のものになりました。このとき、誰にでも利用できる音楽図書館の誕生が決まり、2004年に晴れて今のかたちで公開され、現在にいたります。
閲覧室の照明は明るく、中央には資料を閲覧するためのデスクと椅子が用意されています。
部屋の壁にかかっている絵は、ボローニャゆかりの音楽家や研究者たちの肖像画。16世紀から20世紀まで、ボローニャで音楽に情熱を注いだ人々が、図書館を訪れる『後輩たち』を見守っています。
(写真/閲覧室の壁にはボローニャの音楽家や研究者たちの肖像画が並ぶ)
図書館のコレクションには、博物館で常設展示されているロッシーニ『セビリアの理髪師』やレスピーギなどの自筆譜や、いくつもの異なる版が揃う印刷楽譜や希少本が含まれています。
研究で行き詰まっても、ここに来て調べてみると答えが見つかるとも言われる、ボローニャが世界に誇る音楽資料のコレクション。
かのレスピーギが古い音楽を振り返って学び、新作を生み出していったように、過去から多くを学びたい人にとっては、宝の山だといえるでしょう。
音楽図書館は、予約なしで誰でも利用することができます。図書館受付カウンターにいるクリスティーナさんらスタッフに質問すれば、案内してもらえます。
特定の資料を閲覧したい場合は、事前にオンラインでどの資料を見たいのか確認し、メールで問い合わせるのがおすすめです。
ボローニャ国際音楽博物館・図書館には、目録を作ったガスパリの名をとって作られた『Gaspari online』というオンラインアーカイブがあります。
イタリア語のみ対応ですが、楽譜や書籍、絵画、楽器コレクションを検索して、画像や情報を得ることができます。
Gaspari online ▶︎http://www.bibliotecamusica.it/cmbm/scripts/gaspari/src_aut.asp
また、まだ電子化されていない資料については、少額を払えば電子化をリクエストすることができます。
電子化リクエストのあった資料は、スキャンが終わり次第オンラインアーカイブに公開され、誰にでもアクセスできるようになります。
デジタル化の経費をまかないながら、必要とされている資料から順番に、一般アクセスできる資料を着実に増やしていくという賢い仕組みです。
同博物館・図書館では、コンサートやワークショップなどのイベントが定期的に開催されています。
昨年も、コレクションに含まれている希少な手筆譜を使った古楽コンサートや、他の博物館とコラボレーションをして会場を借りたり、音楽と時代や国を同じくする美術品についてレクチャーを加えたりしてフェスティバルを開き、盛況を博しました。
さらに、音楽関係の評論家や研究者によるトークイベント、ガット弦を手作りする職人による実演レクチャーなどの珍しいイベントも多数。イベント情報は、こちらで確認できます。
▶︎https://www.museibologna.it/musica/schede/calendarioeventi
いつ来ても刺激をもらえる、まさに生きた音楽ミュージアムの代表格です。
ぜひ足を運んでみてくださいね!
◆ボローニャ国際音楽博物館・図書館
(Museo Internazionale e biblioteca della musica)
公式ウェブサイト
住所:Strada Maggiore 34, Bologna
・博物館開館時間(2025年7月現在):
火曜・水曜・木曜 11時〜13時半、14時半〜18時半
金曜 10時〜13時半、14時半〜19時
土曜・日曜・祝日 10時〜19時
12月24日、31日 10時〜14時
1月1日 11時〜19時
・図書館の開館時間(2025年7月現在):
火曜・金曜 9時半〜13時半
水曜・木曜 9時半〜13時半、14時半〜16時半
Text/Photo:安田真子(Mako Yasuda)
2016年よりオランダを拠点に活動する音楽ライター。地域のイベントや市民オーケストラでときどきチェロを弾いています。
