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112-0002 東京都文京区小石川2-2-13 1F
1F 2-2-13 Koishikawa, Bunkyo-ku,
Tokyo 112-0002 JAPAN

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文京楽器の弦楽器フェア2025 企画展

『土地の響き ─ モダン・イタリアンに宿るゲニウス・ロキ』

  “The Genius Loci of Modern Italian Violin Making”

2025年11月1日 土曜日 - 11月2日 日曜日
@ 文京楽器 & SODA PLAZA
※11/4(火)は臨時休業とさせていただきます

展示会概要

期間:2025年11月1日(土)・11月2日(日)
会場:SODA PLAZA
   〒112-0002 東京都文京区小石川2-3-19
   Googleマップ ※文京楽器より徒歩1分

・展示内容は予告なく変更の可能性がございます。予めご了承ください。
・試奏可能な作品については、展示会場内でお試しいただけます。
・試奏は事前予約制といたします。こちらよりお申し込みください。
・試奏室をご希望の方は、お問合せの際にその旨をご記入ください(お一人様最大1時間まで)。
・展示見学は自由にご覧いただけますので、お気軽にお立ち寄りください。



はじめに

19世紀末から20世紀にかけて、イタリア各地で花開いた弦楽器製作の系譜をたどる特別展示です。

かつてイタリア王国、そして現在のイタリアの基盤となったピエモンテ地方(トリノ)やリグーリア地方(ジェノヴァ)、さらにポー川をはさんで南北に広がるエミリア=ロマーニャ地方やロンバルディア地方を中心に活躍した巨匠たちの作品が一堂に会します。
各都市には、それぞれ独自の「土地の精神(ゲニウス・ロキ)」が息づき、職人たちはその土地の文化や風土を反映させながらヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを生み出しました。

エンリコ・ロッカやアンニバーレ・ファニョーラなど、名匠たちの手による楽器を通して、地域ごとの個性や美学の違い、まさに土地が育んだ響きをお楽しみください。

1. ピエモンテ地方 ― アルプスが育んだ静けさと構築

写真:Unsplashより。遠くにアルプス山脈を望むトリノ市街。自然と共存した、ものづくりの伝統が育まれた。

イタリア北西部、アルプスの麓に広がるピエモンテは、厳しい自然と豊かな文化が共存する土地です。首都トリノは、美味しいワインやチーズの名産地であると同時に、フィアット誕生の地として工業都市の顔も持ちます。古くから交易と軍事の要衝として栄え、精緻な金物細工や木工の伝統が息づいてきました。

写真:Unsplashより。バローロ(Barolo)など世界的に有名なワインの産地でもあるピエモンテ。スローフード運動も、この州の都市ブラ(Bra)から始まった。

17世紀には北欧やフランドルからの職人が流入しヴァイオリン製作が始まり、18世紀にはグァダニーニ家がその技術を確立。19世紀のトリノ派作家プレッセンダやロッカ、20世紀初頭のファニョーラらの活躍により、トリノ派ヴァイオリンはフランス的洗練と北イタリア的実直さを兼ね備え、国際的に高く評価されるようになりました。
皆さんは、この地が育んだ響きや工芸の精緻さを、どのように感じますか。

【展示作品】

Violin
FAGNOLA, Annibale / Turin 1933

・FAGNOLA, Annibale / Turin 1936

2. リグーリア地方 ― 海風が運んだ自由と響き

写真:GOOD MORNING GENOVAより。湾口都市ジェノヴァは明るく開放的な街なみ。海運貿易により物流・金融の要所として繁栄した。

イタリア北西部、地中海に細長くのびるリグーリア地方は、険しい山と碧い海に抱かれた海洋の国です。首都ジェノヴァは中世以来、ヴェネツィアと並ぶ交易都市として栄え、造船・金融・芸術の都としてヨーロッパに名を馳せました。港に集う人々や文化の交差が、のちの楽器製作の豊かな土壌を育てます。17世紀にはドイツや北欧の職人が移り住み、ヴァイオリン製作が芽吹きました。18世紀半ばには黄金期を迎え、パガニーニが生まれるほど音楽の街は活気に満ちていましたが、ナポレオン戦争期にはフランス支配と外国製楽器の流入で工房は衰退します。


写真:パガニーニの愛器だったグァルネリ・デル・ジェス“Il Cannone”(イル・カノーネ)は、ジェノヴァ市内のトゥルシ宮に展示保管されている。

19世紀に入ると、リソルジメントの気運とともにジェノヴァは再び息を吹き返し、トリノから名工ジュゼッペ・ロッカが移り住みました。彼の息子エンリコ・ロッカは港で働きながら独学で製作を学び、やがて父の精緻な技とジェノヴァの自由な気風を融合させた名器を生み出します。
潮の香りとともに響くその音は、今もこの地の風土を映しているのです。

3. エミリア=ロマーニャ地方 ― 平野に息づく理性と調和の響き

写真:Study in Italyより。ボローニャ大学は1088年創立。ヨーロッパでもっとも長い歴史を持つ学術都市である。

ポー川の流れる肥沃な平原に広がるエミリア=ロマーニャは、古代ローマの街道「ヴィア・エミリア」が貫く交通と文化の要衝でした。中世にはボローニャ大学を中心に学問と芸術が栄え、フェラーラやモデナでは、洗練された工芸と音楽文化が花開きます。

写真:University Library of Bologna (BO) | Credit: Registry Office of Italians Library, ボローニャ大学図書館。まるでハリーポッターの映画に出てきそうな雰囲気だ。

18世紀末、ナポレオンの遠征によりこの地も一時フランス支配下に置かれ、行政や法制度の近代化が進みました。フランス的な合理主義と都市生活の洗練は、のちの芸術や職人文化にも深く影響を与えます。

19世紀にはイタリア統一運動(リソルジメント)の気運の中で、市民社会が成熟し、地域ごとの工芸・音楽文化が再び活力を取り戻しました。ボローニャ、モデナ、フェラーラ、パルマには多くのヴァイオリン工房が生まれ、北イタリアの都市を結ぶ交易路を通じて、素材や技術が行き交いました。

この地の楽器は、明快で均整の取れた音色をもち、ピエモンテの構築美やリグーリアの自由な響きとも異なる、理性的で調和的な美しさをたたえています。 学問の都に息づく知と職人の手仕事が、いかにしてこの響きを形づくったのか――その答えを探す旅は、今もエミリア街道の風の中に続いているのかもしれません。

4. ロンバルディア地方 ― 都市の洗練が奏でる力と均整の響き

写真:ミラノ大聖堂は北イタリア屈指のゴシック建築。宗教と市民の誇りが息づく街の象徴。

アルプスの南麓からポー川の平野へと広がるロンバルディアは、北イタリアの経済と文化の中心地として古くから栄えてきました。州都ミラノは中世には自由都市として商業と金融の要衝となり、ルネサンス期には芸術と職人技が開花。建築・絵画・音楽・工芸が一体となった総合芸術の都として、洗練された都市文化を育みました。

写真:©hanninen 2017, ミラノ・スカラ座は世界屈指のオペラ劇場。外観からは想像できないほど、中は豪華絢爛。ヴェルディやロッシーニなど、数々の作曲家が指揮を振った。

この豊かな市民文化のもとで、弦楽器製作も早くから発展します。17~18世紀にはクレモナ派が名声を誇りますが、ミラノにおいてもグランチーノ工房を中心とした職人集団が精力的に活動しました。19世紀になると、ナポレオン支配を経て近代都市として急速に成長し、産業・金融・芸術の中心としての地位を確立します。

この時期に活躍したアントニアッツィ工房やビジャッキ工房らは、都市的な感性と職人技を融合させ、力強くも均整の取れた音色を追求しました。その響きには、ミラノのオペラハウスに象徴される華やかさと、北イタリアの精密な工芸精神が息づいています。

都会の洗練と情熱が共存するロンバルディアの音――それは、産業都市の喧騒の中にも凛として響く、理知と感性の調和そのものなのかもしれません。あなたは、この響きにどのような都市の風景や人々の営みを思い描くでしょうか。

参考都市 ― 風土の余韻:フィレンツェ・マルケ、そしてニース

本展示では主に北イタリアの各地方を中心に弦楽器の個性を紹介しましたが、ここでは関連する地域として、中部イタリアのフィレンツェ・マルケ、そして南フランスのニースを取り上げます。
これらの都市は、北イタリアの伝統的製作技法と地元の風土や文化を映し出す“余韻”のような存在です。

5. 中部イタリア ― ルネサンスの光と丘陵が育む響き

写真:Unsplashより。フィレンツェの大聖堂はルネサンス建築の傑作。辻仁成の小説『冷静と情熱のあいだ』の舞台にもなった。

トスカーナとマルケは、中部イタリアの歴史豊かな地域です。トスカーナはフィレンツェを中心にルネサンス文化が花開き、街にはメディチ家ゆかりの美術や建築が息づきます。フィレンツェ派のイジーノ・スデルチは、ミラノ派の技法と自派の伝統を融合させた、肉感的で精緻なヴァイオリンを生み出しました。

一方、マルケ内陸部では、丘陵や農村生活の中で弦楽器製作が営まれました。アスコリに拠点を置いたコンスタンティーノ・チェラーニらは、農業と製作を兼業しながら、素朴ながら温かみのある作品を生み出しました。

【展示作品】

Violin
・CELANI, Constantino / Ascoli 1933

Violia
SDERCI, Igino / Florence 1960

6. ニース ― 地中海の光が映すイタリアの響き

写真:Unsplashより。南仏ニース。かつてはイタリア語でニッツァと呼ばれ、サヴォイア家の支配下でイタリア文化圏に属した。

ニースは現在フランス領ですが、19世紀にはトリノ派の名工プレッセンダのもとでピエール・パシュレル(生まれはミルクール)が共同製作を行うなど、ピエモンテとニースの交流が見えてきます。北イタリアの精密な技術と、地中海沿岸の温暖で開放的な文化が融合し、明るく温かな音色を持つ作品が生まれました。

【展示作品】

Cello
PACHEREL, Pierre / Nice 1852


本展『土地の響き ─ モダン・イタリアンに宿るゲニウス・ロキ』では、イタリア各地の風土と文化が生み出したヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの名器を一堂にご覧いただけます。
展示を通して、皆さんはどの地域の響きに最も心を惹かれましたか。そして、音や形に宿る土地の個性を、どのように感じ取るでしょうか。どうぞお楽しみ下さい。

展示作品弾き比べ&ミニ演奏

展示作品を使用した音の聴き比べと、無伴奏ヴァイオリンによるミニ演奏をお楽しみください。

【ピエモンテ&リグーリアの作品】
 ①11/1(土) 12:00〜 ②11/2(日) 12:00〜

【エミリア=ロマーニャ&ロンバルディアの作品】
 ③11/1(土) 16:00〜 ④11/2(日) 15:00〜
※約30分程度のイベントです。

会場:SODA PLAZA
出演:兼子 竜太朗
定員:10名
料金:¥500



お問合せ・ご予約

株式会社 文京楽器
東京都文京区小石川2-2-13 ザ・パークハウス小石川後楽園1F
TEL 03-5803-6969
火〜土 10:30~18:30
定休日:日・月

※11月2日(日)は営業いたします。
※11月4日(火)は臨時休業とさせていただきます。