オンラインで形を変えて開催
そういった『逆風』が吹くなか、開催を決定した音楽祭がありました。オランダ・アムステルダムの『
チェロ・ビエンナーレ・アムステルダム』です。
今回のルール変更があったのは、開催予定の
わずか9日前。世界各地のチェリストが集まる予定だった国際的なイベントであり、チケットの売り切れる人気公演が多く、総イベント数は100以上……。この計画は実現されませんでしたが、主催者たちは、観客を入れず、新たなプログラムで開催することを決めて動きました。
それが、
オンラインで楽しめる『いわばコロナ・エディション』のチェロ・ビエンナーレでした。
イベントの数は20に減ってプログラムは変わったものの、
楽器編成やジャンルは多彩で、ここでしか聞けない音楽がたくさん盛り込まれているという、同イベントの魅力はそのままです。
同ビエンナーレは
オランダ公共放送とのコラボレーションで、全てのコンサートを
オンラインで無料で配信することを可能にしました。今回は、実際のコンサートの動画を交えながら、見どころをご紹介します。
番組として編集されたコンサート映像
ビエンナーレの会場であるアムステルダムの
ムジークヘボウでは、
10月23日から29日にわたり、合計
20のコンサートが
ライブ映像のストリーミング配信に加え、国内
ラジオ局でも生放送されました。
映像は、現在でも
YouTubeで視聴できるほか、
オランダ公共放送のサイトやスマートフォンの『ビエンナーレ』
専用アプリを通して楽しめます。アプリはオランダ語のみですが、プログラムや出演者のプロフィールなどのより詳しい情報にも触れられるのが利点です。
観ていて最初に気づくのは、コンサート映像に加えて、
司会進行のアナウンスを曲間に入れたり、
出演者や芸術監督のインタビューを交えたりと、一つの番組として楽しめるように編集されているということ。さらに、通常は観客が入れない
バックステージのようすまで収録されている点も興味を引きます。
ほとんどのトークはオランダ語ですが、公式ウェブサイトは英語版があり、プログラムやその解説が掲載されています。
期間中には、国内外からのべ
6万8千回の視聴があったそうです。
③民族音楽やロック、ポップスへ越境するチェロ
音楽ジャンルの多彩さ、ジャンルを越えたコラボレーションは同ビエンナーレの特色のひとつです。今回も、その創造性が存分に生かされたプログラムが注目を集めました。
室内アンサンブルの
アムステルダム・シンフォニエッタの公演では、イランの民族楽器
ケマンチェ奏者のカイハン・カルホール、
キアン・ソルタニ(チェロ)と作り出す、独特な音楽世界に引き込まれます。
チェロ四重奏にドラム、コントラバスを加えてロック、ジャズを披露した
Metrocelliも、演奏者が楽しんでいるのが伝わるライブを届けてくれました。
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Amsterdam Sinfonietta 《ラジオ局のウェブ上で公開》
https://www.nporadio4.nl/cellobiennale/bekijk-cello-biennale-2020/6396-amsterdam-sinfonietta-iraanse-samenwerking-en-veel-symboliek
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Metrocelli
⑤国内コンクールで新しいスターを発見
国内の若手を対象にした
全国チェロコンクールは決行され、注目が集まりました。課題曲のチェロのメインレパートリーはもちろん、管楽アンサンブル伴奏のウォルトン『チェロ協奏曲』なども聞きごたえがあります。
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National Cello Competition Final
実現されたコンサートが伝えてくれること
「
立ち止まらずに、今できることをしたい」
インタビュー映像を観ていると、主催者の一人がそう呟く場面がありました。音楽界だけではなく、多くの分野が未だかつて経験したことがないような逆境といえるコロナ禍ですが、それに立ち向かい、できることを最大限行うこと。シンプルながら力強いメッセージです。
同ビエンナーレのコロナ・エディションで実現されたコンサートの数々は、開催が終わった現在でも、無料で多くの人に届けられています。今一度、画面越しに拍手を送りたくなりました。
写真提供 Cello Biennale Amsterdam文 安田真子