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1月30日の演奏会で、同クァルテットは、演奏されることの少ないシューベルトの最後の弦楽四重奏曲(第15番)を披露しました。
「『プログラムは1時間で』と予め決めて作り上げるような普段のコンサートとは違って、長時間のプログラムを演奏しました。ビエンナーレのおかげで、毎日のように朝から晩まで連続するコンサートの一つひとつを関連づけて聴くという、ここにしかないユニークな体験を聴く人と共有することができるのです」
クレモナ四重奏団は昨年9月 、日本音楽財団からストラディヴァリのパガニーニ・クァルテットをセットとして貸与されています。4挺の楽器はそれぞれ異なる年に製作されており、ストラディヴァリの生涯のうち56年をまたぐセットです。
「これらの素晴らしい楽器をセットで演奏できるのは本当に幸運なことで、日本音楽財団に深く感謝しています。イタリアらしいとても豊かな音色、ホールを満たす響きなどの特長を持った楽器です。ストラディヴァリの楽器は繊細でもあるので、1挺ずつの違いを理解して真摯に向き合う必要があり、弾き方もそれぞれ異なります。私たちは以前からドイツの財団からアンティーク楽器を貸与されて使用していたので、アンティーク楽器をどのように弾けばいいかについてはすでに考えがありました」(グラマッリャ)
「中にはこれらの楽器に慣れるのに時間がかかる演奏者もいると思いますが、私たちは今とても幸せで準備の整った状態です。世界で唯一の特別なセットです。とりわけ開放弦で演奏するとき、他の楽器では出せないような豊かな響きを生み出します。場合によっては、楽器に任せて鳴らすような感覚です。近くでは音が小さく聞こえても、実際にはかなり遠くまで届いていることもあります」(スカリョーネ)
「楽譜にpと書かれているならピアノ、sfならスフォルザンド等と、学校などで誰かに言われたままに弾くことから離れて、今は自分たちで音楽を探索することを楽しんでいます」(ジョン・メイヤーズコゥ(チェロ))
「以前、『何百もの違う種類のフォルテがある』と教えられたのが記念碑的な瞬間でした」 (アレックス・レディントン(ヴァイオリン))
「その言葉で自由になれたのです。作曲家や楽譜の意図を無視するわけではなく、演奏者としてできることの可能性を感じました。音の性格や色、感情をつけていくことは楽しいものです。音楽の中に込められた無数の感情を体験することができる、それが音楽の本質だと思います」(メイヤーズコゥ)
写真:ハイドン、ベートーヴェンを新鮮に聴かせたドーリック弦楽四重奏団
ドーリック弦楽四重奏団のメンバーは、ハイドン、ベートーヴェンの演奏にバロック移行期の弓を使っており、必要に応じて柔軟に弓を持ち替えているのだそうです。
「音楽によって弓を替える必要があるのは、自然なことだと思っています。なぜガット弦が存在するのかをきちんと理解しなければ、本当の音色は追求できないとも思います。私たち現代の演奏家は、過去に存在したものから楽器や弓を選んで使えるので幸運です」(レディントン)
「バロック移行期の弓は跳ねるように自由な瞬間もあり、使っていて自分自身の変化を感じます。まるで、『そう、その弾き方で正解ですよ』と弓が私たちを指導してくれているように感じます」(メイヤーズコゥ)
コンサートについても、弦楽四重奏の定番のレパートリーにとどまらず、ダンスや歌、演劇などの要素を積極的に取り入れた実験的なステージも多く見られました。時代に合わせて新しいものを取り入れて変化していくこれからのクァルテットの在り方を示唆するような音楽祭だといえるのではないでしょうか。
ビエンナーレを通して、演奏者同士の交流の場も生まれました。意外なことに、普段クァルテットとして活動している演奏家は、他のクァルテット奏者と会う機会がほとんどないのだそうです。
さらに、現代曲の作品の初演も多数行われました。カザルス弦楽四重奏団が作曲家ルーチョ・アマンティとともに、即興についてのマスタークラスを開いて若手クァルテットを指導したり、ベートーヴェン作品に着想を得た委嘱新作を初演したりといった、新しい音楽を作り出す現場になったことも印象的です。今後も、クァルテットの可能性を積極的に広げていく場になることが期待されます。
クァルテットの未来には、何が待ち受けているのでしょうか。カザルス弦楽四重奏団のジョナサン・ブラウン(ヴィオラ)はこう語ってくれました。
「クァルテットを聴く人の年齢層は高い傾向にありますが、スペインでは、若い人たちが室内楽に触れ、オーケストラなどよりも身近に感じて強い関心を示すというケースがよく見られます。クァルテットならオーケストラよりも身軽に色々な場所に出向くこともできます。今後、希望の余地はあると思っています」