明るい音色をもつシュタイナーモデルの流行
今回はシュタイナーモデルを用いてメーカーたちについてご紹介します。
写真:“The British Violin” - British Violin Making Association, 2000, 37page "An early 19 century cartoon" possibly by Henry Jay, ca1824 より一部引用
ブレシア派の影響を受けたモデルに比べ、明るく通る音色をもったシュタイナーモデル(Stainer Model)はロンドンで大流行しました。その背景には、器楽演奏においてヴァイオリンが主役を担うようなり、独奏楽器としてのポテンシャルが必要とされるようになった事が影響していると考えられています。
この時期の代表的なシュタイナー・コピーイストには、ピーター・ワムスレイ(Peter Wamsley)、トーマス・スミス(Thomas Smith)、バラク・ノーマン(Barak Norman)、ジョン・ジョンソン(John Johnson)、ウィリアム・フォスター(William Forster)、ロバート・バーンズ(Robert Burns)などが挙げられます。
写真 Violin by Peter Wamslay(London,1742)
名職人 ワムスレイ
ピーター・ワムスレイ(Peter Wamsley)は18世紀に活躍したスタイナー・コピーイスト達の中でも特筆すべき製作者といえます。彼の顧客には
英国皇太子も含まれ、当代きっての名職人としてイギリスの弦楽器製作史に名を残しています。
彼は
ピカデリー(ウェストミンスター区の西側、小売店や劇場が軒を連ねるエリア)にGolden Harpという店を構えていました
写真:左よりTrade card of Peter Wamsley(ワムスレイの名刺) / 1810年頃のピカデリーサーカス
直筆のラベルには、"
Made Sold or Mended" (製造販売、もしくは修復された)という表記の仕方がされています。これは、廉価なコマーシャル楽器や、下請けに作らせた外注作品なども、自身の製品として品質保証を約束する意味を持っていました。こうしたデザインのラベルはワムスレイを始め、この時代の製作者達の間でよく用いられています。
写真:“The British Violin” - British Violin Making Association, 2000, 36page "violin label"
ヴァイオリン需要の拡大に合わせて、彼らのように複数のグレードを作り分けて製作したメーカーは大きな成功を収める事ができました。この頃から、ヴァイオリンメーカーが専門職業としての地位を確立したことがうかがえます。
そして1750年から1790年にかけて、ベンジャミン・バンクス(Benjamin Banks)をはじめアマティ・コピーイストらの製作活動により、イギリスの弦楽器製作はさらに多様化してくこととなります。
次回はアマティのモデルで製作を行っていた製作者達をご紹介いたします。
文:窪田陽平