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第20回 コロナの最中に無観客でオンライン開催 
チェロ・ビエンナーレ・アムステルダム2020 in Amsterdam

変動するコロナ対策の中で

オランダでは、10月半ばから部分的なロックダウンが再開されました。例年ならば新シーズンのオープニングコンサートや国際的な音楽祭で賑わう頃ですが、今年はいつになく静かな秋を迎えています。

夏の間、ウィルス予防対策をしたうえで小規模なフェスティバルやコンサートが再開され、音楽愛好家や演奏者の間には喜びの声が上がっていました。しかし、検査が普及するにつれ、9月末からオランダ国内のコロナウィルスの感染者数は爆発的に増加。それを受けて、10月14日以降は30人を超える集まりやイベントが原則として禁止されることが政府から発表されました。
この知らせは、ウィルス対策をしっかりと講じてコンサートを再開しつつあったコンサートホールなどの業界関係者はもちろん、多くの人々に影響を与えたことはいうまでもありません。
新しいルールの背景には、人の移動をなるべく減らし、感染のチャンスを低くすることでした。そのため、たとえクラスターが発生しない環境だとしても、イベントのために人が外出するという状況は防ぐべきという判断があったようです。

オンラインで形を変えて開催

そういった『逆風』が吹くなか、開催を決定した音楽祭がありました。オランダ・アムステルダムの『チェロ・ビエンナーレ・アムステルダム』です。
今回のルール変更があったのは、開催予定のわずか9日前。世界各地のチェリストが集まる予定だった国際的なイベントであり、チケットの売り切れる人気公演が多く、総イベント数は100以上……。この計画は実現されませんでしたが、主催者たちは、観客を入れず、新たなプログラムで開催することを決めて動きました。

それが、オンラインで楽しめる『いわばコロナ・エディション』のチェロ・ビエンナーレでした。
イベントの数は20に減ってプログラムは変わったものの、楽器編成やジャンルは多彩で、ここでしか聞けない音楽がたくさん盛り込まれているという、同イベントの魅力はそのままです。
同ビエンナーレはオランダ公共放送とのコラボレーションで、全てのコンサートをオンラインで無料で配信することを可能にしました。今回は、実際のコンサートの動画を交えながら、見どころをご紹介します。

番組として編集されたコンサート映像

ビエンナーレの会場であるアムステルダムのムジークヘボウでは、10月23日から29日にわたり、合計20のコンサートライブ映像のストリーミング配信に加え、国内ラジオ局でも生放送されました。

映像は、現在でもYouTubeで視聴できるほか、オランダ公共放送のサイトやスマートフォンの『ビエンナーレ』専用アプリを通して楽しめます。アプリはオランダ語のみですが、プログラムや出演者のプロフィールなどのより詳しい情報にも触れられるのが利点です。

観ていて最初に気づくのは、コンサート映像に加えて、司会進行のアナウンスを曲間に入れたり、出演者や芸術監督のインタビューを交えたりと、一つの番組として楽しめるように編集されているということ。さらに、通常は観客が入れないバックステージのようすまで収録されている点も興味を引きます。
ほとんどのトークはオランダ語ですが、公式ウェブサイトは英語版があり、プログラムやその解説が掲載されています。
期間中には、国内外からのべ6万8千回の視聴があったそうです。
以下、筆者が独自に選んだおすすめのコンサート映像5つのカテゴリー別にご紹介します。

①チェロアンサンブルの多面性

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のメンバーを中心とした豪華チェロアンサンブルが聴かせる、オーケストラに似た豊かな響きや、『Remember Me』の後半には注目されている若手のチェロ五重奏で、改めてチェロ合奏の可能性に気づかされます。

The Royal Concertgebouw Orchestra’s cellists




Remember Me

②躍進中の若手が魅せるソロと合奏

オープニングから次世代を担う若手チェリストが活躍し、同ビエンナーレの今年のテーマ「The Cello takes over(チェロが引き継ぐ)」を印象づけました。
昨年7月に逝去されたアンナー・ビルスマに捧げるコンサートも、愛奏していたボッケリーニの協奏曲など、思い入れの詰まったプログラムが魅力です。

Opening & The Next Generation – The Cello Takes Over!




Elegy for Anner Bijlsma

③民族音楽やロック、ポップスへ越境するチェロ

音楽ジャンルの多彩さ、ジャンルを越えたコラボレーションは同ビエンナーレの特色のひとつです。今回も、その創造性が存分に生かされたプログラムが注目を集めました。
室内アンサンブルのアムステルダム・シンフォニエッタの公演では、イランの民族楽器ケマンチェ奏者のカイハン・カルホール、キアン・ソルタニ(チェロ)と作り出す、独特な音楽世界に引き込まれます。
チェロ四重奏にドラム、コントラバスを加えてロック、ジャズを披露したMetrocelliも、演奏者が楽しんでいるのが伝わるライブを届けてくれました。

Amsterdam Sinfonietta 《ラジオ局のウェブ上で公開》
https://www.nporadio4.nl/cellobiennale/bekijk-cello-biennale-2020/6396-amsterdam-sinfonietta-iraanse-samenwerking-en-veel-symboliek

Metrocelli

④現代音楽の名曲発掘

同ビエンナーレの委嘱作品の世界初演はもちろん、普段ほとんど演奏されることがないような珍しい曲を集めた特徴あるコンサートを聞いてみるのもおすすめです。
テント内の親密な空間で予定されていたマヤ・フリッドマンのソロ公演『Rituals』では、歌とチェロ演奏が醸し出す、独特の世界観に浸れます。とくにプログラム最後の曲『Aube』は、在米作曲家の田中カレンが書き下ろした世界初演曲で、録音音声と詩の言葉とともに、チェロが自在に姿を変えるような演奏が繰り広げられています。
アムステルダム音楽院で現代音楽を専攻する学生たちのアンサンブル『Score Collective』と同音楽院で指導しているピーター・ウィスペルウェイとの共演も、独特の存在感を放っています。


Rituals



Score Collective

⑤国内コンクールで新しいスターを発見

国内の若手を対象にした全国チェロコンクールは決行され、注目が集まりました。課題曲のチェロのメインレパートリーはもちろん、管楽アンサンブル伴奏のウォルトン『チェロ協奏曲』なども聞きごたえがあります。


National Cello Competition Final




実現されたコンサートが伝えてくれること

立ち止まらずに、今できることをしたい
インタビュー映像を観ていると、主催者の一人がそう呟く場面がありました。音楽界だけではなく、多くの分野が未だかつて経験したことがないような逆境といえるコロナ禍ですが、それに立ち向かい、できることを最大限行うこと。シンプルながら力強いメッセージです。
同ビエンナーレのコロナ・エディションで実現されたコンサートの数々は、開催が終わった現在でも、無料で多くの人に届けられています。今一度、画面越しに拍手を送りたくなりました。


写真提供 Cello Biennale Amsterdam
文 安田真子