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BG Films サイドストーリー 2

文京楽器が贈る短編映像作品集BG Filmsの制作秘話第2弾!今回は東京でのロケについて、弊社社長であり、本企画のプロデューサー役を務めた堀酉基(ほりゆうき)が語ります。

 

—東京ロケの話を聞かせて下さい。


東京ロケは店舗から始めたので、当初は予定通り進んだと思います。その後、小田原と五箇山に行って本当に素晴らしい映像が撮れたので、東京でももっと印象的なものを撮らないといけないということになりまして…そこからが大変でした。「バイオリン・メーカー」の工程も撮れ高が少ないので取り直すことになり、ダンさんの帰国も迫って来て時間が限られていたので超特急で作業しました。

「ミュージシャン」冒頭の東京の都会的な美しいシーンがありますよね。このロケは大変でしたよ。これもダンさんの頭の中にしっかりとしたイメージがあったので、納得する映像が撮れるまで東京のフォトジェニックなスポットを回りに回りました!三本の連作フィルムで、五箇山の自然と東京のアーバンな雰囲気は対比として絶対必要だったのです。結果として素晴らしいオープニング映像に仕上げることができました。

フォトグラファーは一旦ファインダーを覗いたら、どんな環境でも撮影に集中できるんですね。極限を言えば、戦場カメラマンも多分そうなんでしょう。東京の屋外ロケでは、人通りの多い所が中心だったので、クレームが付かないか周りは結構ハラハラしました…

 

—”THE MUSICIAN”では久保陽子さんについて取り上げていますが、その経緯を教えて下さい。


まず始めに、文京楽器と久保陽子さんの関係を少しおさらいさせて下さい…

久保陽子さんは、1964年に18歳でチャイコフスキーコンクールで入賞した日本が誇るバイオリニスト。未だその時の純粋な気持ちをずっとキープされている、本当に偉大な音楽家です!結婚、子育て、介護など女性としての人生をきちんとこなしてらっしゃる一方で、音楽家としても、ソリストとして活躍するだけでなく、勉強のために室内楽に継続的に取り組んだり、東京音大で長年後進の指導をするとか、普通じゃ考えられない八面六臂の活躍ぶりです。文京楽器はストラドやデルジェスをお世話させていただきましたが、正直、普段はお店にあまりいらっしゃってなかったと思います…

それが、2011年の東日本大震災のあと、一念発起して音大も定年前に辞められて、ソリストの原点に戻ると宣言しました。それを体現するために、バッハの無伴奏曲全曲を100回演奏するというチャレンジをされました。その頃に文京楽器も店舗を改装して、お店でサロンコンサートができるようになりました。そのオープンイベントでバッハとパガニーニを6日間連続で演奏して。以来、定期的に演奏をしていただくことになり、本当に親しくさせていただいています。

そんな訳で、先程話した三角形の先端に当たる音楽家のフィルムは、当然のごとく久保先生を取り上げることになりました。

 

—久保陽子さんは、現在堀さんの製作したバイオリンを弾いてますよね。

はい。ストラドもデルジェスも弾いてきた久保さんに、自分の楽器を弾いていただけるなんて本当に光栄なことです。久保先生は、デルジェスを手放した後も、色々とオールドやモダンの楽器を弾いてたんです。ある日、何の気なしに自分の楽器を弾いて下さいと頼んだら、とても気に入ってくれて…中途半端なアンティーク楽器を騙し騙し弾くくらいだったら、健康な新作楽器の可能性に掛けて見るとおっしゃってくれて、それ以来ご愛用頂いています。

私は東京で数年働いた後は、自社バイオリン製作のプロジェクトに抜擢されて、小田原の工房で10年以上製作に専念していました。だんだん良いものができるようになったんですが、ずっと何かが足りないと感じていました…それは、優れた音楽家からのフィードバック。仏作って魂入れるにはそれが必要だと。東京で全体を統括するようになって、製作する時間は少なくなったが、その機会が訪れました。不思議なものですね。

歴史を振り返ると、名器が生まれる条件があると思います。一つ目は、世界最高の名器に直接触れらること。二つ目は、一流の演奏家との共同開発ができること。三つ目は、その条件を活かすことができる製作サイドのパッションです。逆を返せば、この条件さえ満たせば名器が自然と生まれるのではという仮説に辿りつきました。現在はそれを実証しているところとも言えます。今回のBGfilmsのテーマの一つですね。

 

—久保陽子さんのロングインタビューはいかがでしたか?

とても有益な時間でした。フィルム内で取り上げられている箇所はほんの一部です。バイオリンを始めたところから、国際コンクールへの挑戦、日本での音楽活動、2011年の一念発起、現在の心境と順を追って詳しくお話していただきました。

久保陽子さんは本当に偉大な演奏家ですが、全く偉ぶるところがない方なんです。インタビュー内容は感銘を受けるような話が多かったです。久保さんは本当に謙虚かつピュアな気持ちでお話になるので、時間の限られたフィルムで使えるような、核心的な内容が凝縮された言葉を引き出すのが少し難しかったところかもしれません…

 

—ダンさんはじめ同行したスタッフが、色々な苦労をして素晴らしい映像や音源が撮れた訳ですが、デザイナーの平松さんの存在が大きかったようですね。


今ままでプロデューサーと称して偉そうに話していますが、今回の映像ができたのは、文京楽器のデザイナー、アドバイザーとしてずっとお世話になっている平松謙三さんのおかげです。平松さんは私の小田原時代にピグマリウス(アルシェの新作楽器ブランド)のカタログをリニューアルした時に始まって、10年以上の付き合いです。色々な方から文京楽器グループのVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)を褒めて頂くことが多いのですが、カタログも広告もWEBサイトも全て平松さんのデザインによるものです!

平松さんはただのデザイナーじゃないんです。飼っているクロネコのノロをヨーロッパに連れて旅した経験を「ヨーロッパを旅した猫の話」っていう本にまとめて話題になりました。

その後も、毎年世界中を旅していて訪れた国は37ヶ国以上になったと聞いています。詳しくは「世界を旅するネコ・宝島社」を読んで下さい。平松さんがデザインしたノロの関連グッズが色々あるんですが、カレンダーは特にお薦めです。行ったことのない世界の美しい風景にノロがチラリと写っている。それだけで何となくほっこりするし、その国のことを身近に感じてしまうんです。私は平松さんから頂いて愛用していますが、巷でも相当人気のカレンダーみたいですよ!

現代はレベルの高いことをしていても、多くの人に知られなければビジネスが成り立ちません。デザインはそうした時代の中で重要な役割を果たすと確信しています。バイオリンの世界には独特の美意識がありますから、その文脈を大切にしながらも、時代性を考慮して自分達の個性も表現しなきゃいけない。ヨーロッパの美的感覚を体で理解している平松さんは、そういう意味でも文京楽器には絶対に必要な人です!


—撮影にも同行してるんですよね。

もちろんです!楽器屋の私たちだけでは、今回の撮影は無理です。デザインの専門家がダンさんとの間に立ってしっかりクオリティ・コントロールや方向性を調整してくれているから何とか作り終えることができました。

世界を旅している平松さんは英語も堪能なので、私は大きな観点からこんなものを作りたいとかこんなシーンはどうですかとか提案しているだけで、それを通訳して絵づくりをダンさんに提案しているのは平松さんです。ダンさんとってもそれが良い刺激になって思いがけない創作ができているようです。

 

—平松さんはインタビュアーもこなしているとか…

先ほども、申し上げましたが執筆もしているので、話のコンテクストやロジカルな構成が良くわかる方なんです。インタビューの聞き手には最適なのでお願いしました。お陰で皆さんから良いお話が聞けました。



◇Photo by Kenzo Hiramatsu 



—編集が大変だったと聞いています…


そうなんです…編集の大変さは予想以上でした。今回は映像もインタビューも沢山素材が取れたのですが、今回はSNSでの配信や時代性を考慮して1分版のトレーラーと3分版の本編と作品の長さは決めてましたから、逆にそれをまとめあげるのが大変でした。

特にインタビューの編集は大変でしたね。3分や1分っていうのはやっぱり短いですよ。その中に物語の構成を入れなければ、言いたいことがわからなくなってしまう。また、それぞれの要素に間も無ければいけない。間はとても重要で、間ががないと物語そのものが動き出さないことを痛感しました。音楽に似てますね…

この苦労して編集したインタビューですが、映像に合わせるのが難しくて。ここで言葉の壁が立ちはだかりました。ダンさんにはインタビューの内容がわからないので、どう映像を合わせるのかが課題になりました。英語字幕も付けたので、大まかな意味を頼りに、細かくは秒単位で指示していくことになりました。この辺りのやり取りは平松さんに、頻繁かつ入念にやっていただきました。


—音楽にもこだわりがありますよね。

楽器屋のフィルムですからね。ちゃんとしてないと…恥ずかしいですから。音楽監督は才能のある若手作曲家でキーボードプレイヤーの松崎颯太くんにお願いしました!

松崎くんは東京藝大の作曲家科を卒業したばかりの好青年。一度耳にした曲は演奏で再現できる特別な才能がある天才です。ピアノ演奏のレベルも高いし、録音とかPAみたいな技術にも詳しいんです。バイオリンは演奏してないけど、久保陽子さんとも数多く共演しているので、いわば久保塾の塾生ですね!

文京楽器の音楽活動の一環で「シンセサイザー・オーケストラ」っていうのを実験的にやっています。弊社のサロンコンサートで久保さんがコンチェルトを弾きたいと言い出して、ピアノ伴奏ではつまらないから、シンセサイザーで本物さながらで伴奏しようということになり松崎くんに声がかかりました。最初は覚束ない部分もありましたが、最近のクオリティは実にレベルが高い。「ボウ・ワークショップ」のBGM使われているモーツァルトのコンチェルタンテは、このシンセサイザー・オーケストラによるもの。ソロの二人以外は数名の弦楽器とシンセサイザー。信じられないでしょ。

 

—”THE MUSICIAN"に登場するカルテットは特別編成されたとか…

はい、アルシェが創業35年を記念して結成されたアルシェ・カルテットです。久保さんがファースト、セカンドとビオラには久保塾の塾生である渡邊多佳子さんと川口さくらさん。チェロには、日本が誇る若手チェリストの横坂源さんを迎えました。このカルテットのために特注の弓を4本を作って弾いてもらいました。お世話になっている方々やエンドユーザーをお招きして演奏会とパーティをしました。この演奏会の様子をダンさんが映像、松崎さんには録音を担当してもらって収録しました。

ちなみに、久保塾というのが実際にある訳ではありませんよ…私が勝手にそう呼んでいるだけです。文京楽器のサロンコンサートを拠点に、久保陽子さんの音楽と人格を慕って集まった若手演奏家が先生と共演するために、文字通り寝食を共にし、課題を克服しながら切磋琢磨することで、著しい成長を遂げています。一般的な教育機関を超越した形で存在しているので、これを私が幕末の私塾になぞらえて、勝手に久保塾と命名しました。

—色々と興味深い話をありがとうございました。総括として、BGfilimの映像の魅力はどんなところですか?

ダンさんはやっぱりフォトグラファー。もともと映像から来ている人じゃないので、画面の構成がしっかりしてます。だから全てが絵になる。日本人カメラマンならもう少し客観的で説明的な目線になってしまうと思うんですが、外国人のダンさんの目線だからこそ、迫力のある映像が取れたと思います。同時にダンさんの解釈を通じて、文京楽器の持っている共通の想いとか美意識とかパッションみたいなものを、私達自身がが再発見できたし、またその空気感が映像でも上手に表現できたと思っています。


最後にひとこと、どうぞ…

いろいろと話が長くなってしまいました…BGfilmsはある種、ここ数年の文京楽器の活動の集大成的なものなので、ここに繋がるまでのストーリーをどうしても話したかったんです。色々な人に支えられて、縁があって文京楽器は成り立っていますから。

とにかく、一人でも多くの人に見てもらいたいです。苦労して仕上げましたから…フルバージョンでも3分だから全編見てもあっという間じゃないかなと思うんですけど。スマホでゲームする時間を削ってBGfilmsを見て下さい(笑)



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