バイオリン商 デビッド・ローリーの回想録 第8話

2010.04.12

前回までのお話はこちら

The Reminiscences of a Fiddle Dealer by David Laurie #8

【難しい鑑定 よもやま】-1

驚いている私に、ビヨーム氏とジャンセン氏が事情を説明し始めた。

話はこうだ。

ジャンセン氏は私の言葉が頭から離れず、自分で徹底的に手がかりを調べたらしい。そして、とうとうロンドンの楽器商が、そのチェロの前の所有者に発行した領収書を発見したのだった。それにはまさしく「バラク・ノーマン作」と書いてあったという。

ジャンセン氏はそれ以後、多大なる信頼を私に寄せてくれて、「ブラッセルに来た時は、是非自分達の音楽会に出席して欲しい」と心から勧めてくれた。音楽に目のない私は、すぐにご招待にあやかり、たくさんの有名な芸術家たちに接する喜びを得ることができた。

ビヨーム氏やジャンセン氏ほどの優れた判別能力を以ってしても、しかもメーカーの特徴が顕著であっても、時として楽器の鑑定を誤ることもあるという事実は、おそらく読者の皆さんも驚かれるに違いない。しかし、その当時は英国派の製作者の名前はほとんど海外に知られていなかったのである。

しかし面白い事実がここにある。イタリアやフランスのメーカー達、例えば、ビヨーム兄弟、ガン、シャノ、パノルモ、フェント、モウコテル等はロンドンに行ってそこで製作をしていた時期があり、これはすでに良く知られている事実である。だからと言って、彼らが英国の製作者だと思う人はいないだろう。ビヨーム自身でさえ、英国には現在・過去共に優れたメーカーが存在したことはないと言い、その事実も認めたがらなかった。

(つづく)

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