【連載】バイオリン商 デビッド・ローリーの回想録 第2話

2009.11.28

前回までのお話はこちら

The Reminiscences of a Fiddle Dealer by David Laurie #2

【イタリアンの音】-1

義父の仕事の都合で、私は田舎町へ引っ越してきたのだが、生活が落ち着いてくると、バイオリンのレッスンを受けたいと母にせがんだ。

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母は渋ったが、これも義父が味方をしてくれたため実現することになった。当時、バイオリンの教授といっても、社会的名声や地位は全くなかった。母は私がレッスンに出かけるたびに「裏道を通って行きなさい」とうるさく言った。そのくらいだから、例の緑色の袋に入れたバイオリンは、上着の下に隠し持って出かけなければならないほどだった。

そんな状況下で始めたレッスンだったが、先生は読譜やスケールをみっちり教えてくれた。私が技術的に進歩することに興味を持ってくれて、レッスンが2時間も続くことはしょっちゅうだった。当時、1時間で4ペンスのレッスン料だったが、時間がオーバーした分はいつも無料であった。

2度目に移転したのはグラスゴーだったが、私の道楽はここで始まったのである。

有名なバイオリニストが市の公会堂へ来て演奏すると聞けば、何をおいても友人と2人で出かけた。最初に聞いたのは、ヴュターンであった。彼の背は低かったが、胸幅の広い強じんな体格をしていた。太く短い指が印象的で、ポンと弦の上に落とす指の音が、かなり離れた聴衆にも聞き取れるほどだった。何よりも私の胸を打ったのは、ヴュターンの弾くバイオリンの音色だった。彼は、ヨゼフ・ガルネリ・デル・ジェス・を使っていたが、それは今まで私が聞いたことのある音色とは全く違い、ただ同じ「バイオリン」であるという他は、何の共通点も見出せなかった。

(つづく)

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