アンティーク楽器の基礎知識

アンティーク楽器の販売では専門的な用語が多くなりがちで、お客さまと私どもの間で言葉のニュアンスが違う…とお感じになることがあるかと思います。ここではお客さまとのコミュニケーションがより明確なものになるよう、基礎的な用語の意味を解説します。

※言葉の定義に関しては専門業者の間でも違いがあります。ここでは最もオーソドックスなものを採用しています。

1. 年代区分について

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オールド(OLD)
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Antonio Stradivari 1716 ex Duranty, Cremona

1800年以前に作られたアンティーク楽器。200年以上の時を経ており、木材の経年変化による独特の音色があります。情報の伝播が十分でなかった時代であり、製作した地方やファミリーによって作風の違いが明確です。名器と呼ばれるもののほとんどがバイオリン発祥の地イタリアで作られていることも大きな特徴と言えるでしょう。

モダン(MODERN)
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Giuseppe Antonio Rocca 1851, Turin

1800年以降に作られたアンティーク楽器。ストラディバリウスなどオールドイタリアンの名器の研究が進み、各地でこれらのコピーや長所を取り入れたため、オールドと比べると地方色は少ないといえます。本家イタリアだけでなく名器が多く集まったフランスやイギリスにも質の高い楽器が多く存在します。

1800年という区切りは実際には明確ではなく、イタリアンでいえばG・F・プレセンダ(1777~1854)以降をモダンバイオリンと呼びます。この時期は、より多くの聴衆の前で楽器が鳴るようにセットアップが改良され、オールド名器の研究が進みました。また単純な年代の違いだけでなく、これ以降の楽器には新しい様式が取り入れられているため、オールド/モダンと分けて区分しています。

2. 国別の特徴

イタリアン(ITALIAN)
オールドイタリアン(OLD ITALIAN)

バイオリン発祥の地は北イタリアの小都市クレモナ。そのため、アマティ、ストラディバリ、ガルネリ・デルジェスなどといったオールド名器のほとんどがイタリア製です。オールドイタリアンは「シルバートーン」と称される別格の響きを持っており、美術品としての評価も高く、一流演奏家にとっても垂涎の的。そのため値段も大変高価なものとなります。

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左: クレモナ カヴール広場のストラディヴァリ像
右: Giuseppe Guarneri del Gesu 1738 ex Kemp, Cremona
モダンイタリアン(MORDERN ITALIAN)

G・F・プレセンダ(1777~1854)以降、トリノ、ミラノなど北イタリアの都市を中心にバイオリン製作が発展しました。モダンイタリアンの作品は、名器を参考にしながらも作風がオリジナリティに富んでいるのが特徴。しっかりとした作りで、明るく力強い音が出る楽器が多く、最近とみにその価値が上昇しています。

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Annnibale Fagnola 1924, Turin
フレンチ(FRENCH)

オールドの楽器に質の高いものも存在しますが、あまり数は多くありません。モダンにおいては名器の研究が進んでいたため形がよく、精巧なつくりの楽器が多く存在します。J・B・ビヨーム(1798-1875)などがその典型で、明るく華やかな音が特徴。ファクトリーメイドの楽器も多数存在し、イタリア製と同等程度の性能であれば、安く手に入れることができるでしょう。

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Jean Baptiste Vuillaume made after ex Alard Strad, Paris
ジャーマン(GERMAN)

ドイツは弦楽器の一大生産地で、たくさんの楽器が存在します。J・シュタイナー(1617-1683)など質の高いオールドも存在しますが、アーチが高すぎたりすることから音色は良いが音量に欠けてしまう場合が多いようです。モダンにおいては(一部マスターメイドも見られますが)ファクトリーメイドの割合が高いのが特徴です。

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Agidius Kloz 1774, Mittenwald
イングリッシュ(ENGLISH)

オールドの楽器に質の高い楽器も存在しますが、あまり数は多くありません。モダンにおいてはフランスと同じく名器の研究が進んでいましたが、いわゆる完全コピー、レプリカものが多いのが特徴。ボラー・ブラザーズ(1885-1927)などがその典型です。

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Voller Brothers made after ex Kreutzer Strad, London

上記は一般論に過ぎず、国の作風に合わない例外的な楽器や、その他の国でも素晴らしい出来栄えの楽器が数多く存在します。たとえば「オールド・ダッチ(オランダ)バイオリン」では、ヤコブスやカイパスといったオールド・イタリアンに近い出来栄えのものもあります。知識はあくまで参考程度にとどめ、先入観を持たずに選ばれるのも良いでしょう。

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